コイカゼ・ダイブ 6th【ars M.A】 (ページ1)

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176.キラキラ・セカイ。ページ1

3学期が始まる。

始業式、私はこれまでとは違った気分で家を出た。

彼氏がいる、ってゆーのはこんなにも世界を変えて見せてくれるんだ。

駅でポケットから出した、ギンガムチェックの定期入れ。
それを自動改札にピッと近付けるだけで、私の胸もトクンと鳴る。

車窓に流れる景色も朝陽を浴びてキラキラ、少し結露してる窓をキューっ...と指をなぞる。

その指先に伝わる冷たさまで、愛おしい。

何これ、何なんだろう。

何だか分からないけど、全部が愛おしい。

こんな気持ちのまんま、相葉先輩に会ったら「好き」って気持ちで私は壊れちゃうんじゃないかな...なんて、本気で心配になっちゃう程。

学校の最寄駅に着いただけで、ドキドキが大きくなる。

歩きながら、スカートをキュッキュッと下へ引っ張ってみた。
あんまり短いのは、先輩が嫌がるかな...なんて。

あ、けど先輩だってら短い方が良いのかな...

今度はスカートを少しクイッと引き上げる。

そんな無意味な事をしながら駅前に出るとそこのコンビニから、おそらく今買ったばかりのガムの包み紙を破きながら

マフラーぐるぐる巻きで口元が隠れてる櫻井先輩が出て来た。

ガムを食べる為にマフラーをちょっと下げて、粒タイプのそれを口の中に放り込んだ先輩を見てたら

まん丸の大きな目と、目が合った。

「あ。大坂さんだ」
「おはようございます、櫻井先輩」
「あけましておめでとう！」
「あっ...はい！あけましておめでとうございます」

今年もよろしくお願いします、って頭を下げる先輩につられて私も慌てて頭を下げた。

「ガムいる？」
「え？」
「手、出してー。はい、どーぞー」
「あ...ありがとうございます」

広げた私の掌に、コロンと小さなガムを置いてくれる。

「あ、ミントなんだけど平気？食べれる？」
「はい、食べれます！」
「フフッ、良かった」

喋る櫻井先輩からは、微かにミントの匂いが漂う。

そのまま何となく、流れで一緒に歩き出した。

先輩のメッセンジャーバッグでは、相変わらずミッキーのキーホルダーが揺れる。

「あ、ねぇ。大坂さん」
「はい」
「問題出して、問題」

そう言うと、櫻井先輩は学ランのポケットから単語帳を出した。

「はい、ここから出してー」
「あ...分かりました」

通学路、単語帳を捲りながら問題を出して

先輩がそれに答える。

何度か繰り返した時

「あ。雅紀、寝坊したから後の電車で来るってー」

突然言われて、ゲホンと噎せた。