コイカゼ・ダイブ 5th【ars M.A】 (ページ34)

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175.バクダン・トウカ。ページ34

先輩がドキドキしてるとしたら、そのドキドキはきっと私のドキドキの半分位だと思う。

さっきからドキドキとキュンキュンで、私だってそれこそ吐きそう。

「もうすぐ学校始まるねー」
「あ...はい、そうですね」
「朝起きれるかな、俺」

普段してるのと同じような話なのに、違って聴こえるのは

きっと自分から見えてる景色がいつもと全然違うから。

「休みが終わって学校始まるの楽しみだなって思ってたの、小学生の時だけだったな」
「フフッ、私もそうだったかもしれません」
「そうなんだ！俺さ中学と高校は、出来ればずーっと休んでたくってさ」

綺麗な茶色い髪は、学校では眉を顰められてしまう。

遅刻も早退も当然のように繰り返してて、登校してても裏庭に居た先輩は、学校好きじゃないんだろうなってのは何となく感じてた。

でも私はそんな先輩に恋をして

学校に来るのが、楽しみになって

居ない時の方が多い先輩の姿を探すのも楽しくって

どっちかと言えば勉強も得意じゃなくって、夏休みや冬休みの方が学校より全然楽しいし！って思ってた私に

学校が好き、学校に行きたいって思わせてくれたのは相葉先輩。

「でもね、俺今すっごい学校行くの楽しみ」
「え...？」
「今ってゆーか、夏休みの時に『あー、早く学校行きたいなー』って初めて思った」
「......」
「なのに登校日、寝坊して行けなかったんだよね！アハハ！」

そうだよ。登校日、先輩は居なかった。

だけど、あの時の私は相葉先輩と若林先輩が付き合ってるんだとばっかり思ってたから会わずに済んでちょっとホっとしてたんだ。

「夏休みの間ずーっと『早くAちゃんに会いたいなー』...って、思ってたんだ」

...え？

「でも俺みたいなフリョーなんて興味無いだろうなーって思っててさ」
「えっ...！？えっ...あのっ...」
「だから、ちょっとづつだったけど学校...行かなきゃなって思ったの。イイコになんなきゃ、Aちゃんにこっち見て貰えないなーって」

顔が熱い。

思っても無かったコトを、何かサラっと言われちゃってどんな顔をしたらいいのか分からない。

「はい、到着ー」

いつの間にか着いてたうちの前で先輩が私の身体を地面に下ろしてくれた。

「あ...ありがと...ございます」
「いえいえ！」

寒さでほっぺと鼻がちょっと赤くなってる先輩が笑う。

「ホントは抱っこしたまま連れ去っちゃいたかったんだけどね」

さっきからもう、先輩の言葉で目の前がグラグラする。