コイカゼ・ダイブ 5th【ars M.A】 (ページ4)

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144.キラキラ・エキマエ。ページ4

向かい合わせで、片手首はギュッと掴まれて

先輩の口元からは、白い息が

ふわりふわりと、溢れ出る。

だけど明るい駅を背にしてる相葉先輩の表情は、逆光になってよく見えない。

「けど...先輩...きっとお店でみんな、先輩が帰って来るの待ってます...」
「そんなの連絡すれば、平気だよ」
「でも...」

クリスマスイブの駅前は、賑やか。

たくさんの人が、私達の横を通り過ぎる。

「今日は送らせてよ。せっかくのクリスマスだし」

街もこんなに綺麗だしさぁ！って、駅前のキラキラを見た先輩の顔にそのキラキラが当たって

やっと表情がちゃんと見えた。

目尻にキュッと寄った笑い皺に、キュン...と胸が縮む。

「ねっ！」
「...はい！」
「帰ろう帰ろう！」

くるんっと、先輩がまた前を向いた瞬間

ドクン、心臓が痛い位に鳴いたのは

私の手首を掴んでた相葉先輩の手が、するりと下りてきて

大きな掌が、私の掌を包み込んだから。

「あっ！サンタさん居る！」
「えっ？」
「ほらほら！俺、あのバイトしたいなー」

私は、ドキドキで胸が潰れるんじゃないの！？って思ってるのに

繋いだ手を、先輩は全然気にしてない感じで

ケーキ屋さんの前でクリスマスケーキを売ってるサンタさんコスチュームのバイトさんに釘付け。

「...誕生日にバイトする事になりますね」
「あ、そっかー。でも良いなぁ、あれ」
「そんなにサンタさんなりたいですか？」
「なりたい！トナカイ連れてさぁ！」
「アハハ！ケーキ屋さんにトナカイ、居ませんよ？」

いつもと変わらない先輩と笑ってると、私のドキドキも落ち着いてくけど...

けどやっぱり、相葉先輩は女の子と手を繋ぐなんて普通の事なのかな...って思うと、どんな顔をしたら良いのか分からなくなる。

「どしたの？Aちゃん」
「え...ううん！何でも無いです！...私もサンタさん着てみたいなーと思って」
「ホント！？じゃあ、着る？」
「えっ！？」

ドンキとかに売ってるかなー？って、本気なんだか何なんだか分からない事を言って

先輩は繋いだ手を、優しく引いてくれる。

この繋がれた手に、意味なんて探しちゃダメで

改札を通る時にその手が離れた事にも、悲しいなんて思ったちゃダメ。

だってほんの一瞬でも、相葉先輩が手を繋いで歩いてくれたってだけで

やっぱり私は嬉しくて

夢みたいなんだもん。

ドキドキが先輩にバレたらどうしようって思ったら、余計にドキドキして

何かもう、苦しいよ。