コイカゼ・ダイブ 5th【ars M.A】 (ページ29)

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170.オ・ミクジ。ページ29

「おみくじ、引く？」
「え？」
「引こう！」
「え！？」

お守りをダウンのポケットに入れた先輩が、私の返事なんか聞かずに「おみくじ二回引きまーす！」って巫女さんにお金を渡した。

おみくじ...実は引かずに帰りたいって思ってた。

昔から、おみくじが苦手。
大吉が出れば良いけど、凶なんか出ちゃったらその一年どうしたら良いの！？って思っちゃいそうで、もうずっと引いてない。

高校受験の時なんて、絶対に引かない！って決めてたのに「受験前の運試しだ！」って無理やり引かせたお父さんを恨んだ。
...まぁ、大吉だったからすぐに許したけど...。

楽しそうにカシャカシャと筒を振って出て来た棒を取った先輩が、そのまま私に筒を渡して来た。

「はい、どうぞ！」
「...はい...」

断れないまま、カシャカシャと筒を振って棒を出す。

そこ書いてあった番号を巫女さんに伝えると、「良いお参りで」と一枚の紙をくれた。

心臓がバクバクする。

こんなコトでって思われるかもしれないけど、苦手なんだもん。

「せーの！で一緒に見ようか！」
「...はい...」
「せーの！」

目を瞑っておみくじを広げる。

「あ...アハハッ」

先輩の笑い声が聴こえて、私も薄く目を開いた。

「...うそ...」

私の目に飛び込んで来たのは、一番見たくなかった一文字。

「Aちゃん、どうだった？」
「...先輩...」
「え？どしたの？」

泣きそうになった私は、おみくじを先輩の胸に押し付けた。

「あ、凶だ...」
「......」

だから、おみくじ嫌い。
もう二度と引かない！絶対に引かない！

「一緒だ！アハハ！俺も凶だった」
「...えっ？」
「オソロイだねー」

私のおみくじと自分のおみくじをペラっと私に見せて、先輩が笑った。

「先輩...やじゃないんですか？」
「え？んー、別にやじゃないよ？」
「何で！？だって、凶ですよ？...私、凄いショックです...」

せっかく先輩と一緒に初詣で楽しくって幸せなのに、今すっごい凹んでるし...
こんな気分になったの、おみくじのせいだし...

「だって、今が凶って事でしょ？これ以下は無いって事だよ？」
「......」
「今、こんなに楽しいのにこれが凶なんだよ！じゃあ、この先これ以上どんだけ楽しいコト待ってんだろって思わない？」
「...先輩」

先輩が、私の手を引いて御神木まで歩いてく。

「まぁ、大吉だったらそれはそれで喜ぶんだけどね！」
「フフッ、そうですね」

２人で『凶』のおみくじを、枝に結わいつけて笑った。