コイカゼ・ダイブ 5th【ars M.A】 (ページ28)

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169.カミ・ダノミ。ページ28

「この神社って、女の人に人気あるんだって！」

水で更に冷たくなった先輩と手を繋ぐ。

私も手を清めたんだから、同じように冷たくなってるはずなのに先輩の手の方が冷たいのは

『心があったかい人は手が冷たいんだよ』ってゆー迷信が本当だってコトなのか

単に私が相葉先輩にドキドキし過ぎて体温が上がっちゃってるのか...どっちもかな。

「縁結びの神様なんだよ！」
「縁...結び」
「うん。そう、縁結び」

繋いだ手が、ゆらゆら揺れる。

「あ、ヤバ...間違えちゃった...」
「え？何がですか？」

先輩が、ちょっと気まずそうにこっちを見る。

「だって、もうAちゃんとの縁は結ばれたでしょ？」

周りに居るたくさんの人達の声で、聴き取りにくかった。

だけど、ちゃんと聴こえた。

でも聞き間違いかな、とも思った。

「ここの神社知ったのが、告る前だったから絶対にAちゃんと来て神様に縁を結んで貰おう！って思ってたんだけど...あ...これどうなるんだろ？」
「...え？」
「もう結ばれてる場合。神様は俺達をどうしてくれるのかなー？」

先輩、すごく普通に言ってるけど『結ばれた』って...何か...何か...

「...あっ！結ばれたってちょっとアレだね...！ごめん！撤回撤回！！」
「えっ！？あっ...いえっ...はい...」
「えーっと...彼氏と彼女になってる場合、かな」
「...はい...」

もう、心臓の活動限界を感じる。

先輩の言うように女の人が目立つ境内でお参りをして、「何お願いしたの？」「内緒です」なんてベタなやり取りをしてると

「あ！お守り買いたい！」

先輩が思い出したように言った。

「お守りですか？」
「うん。翔ちゃんにね」
「あ！受験の」
「そうそう。俺が出来るのは神頼み位だからさ！」

２人で並んでるお守りを眺める。

「...あれ？」
「...あれ？」

『学業成就』のお守りが、見当たらない。

「縁結びの神様だから、勉強のお世話まではして貰えないのかなー...」

んー...って唇に人差し指を当てながら呟いた先輩が「じゃ、これにしよ！」ってピンク色のお守りを手にした。

「...え？先輩、それですか？」
「うん！これ」
「でもそれって...」

ピンク色のお守りの真ん中には『安産祈願』の四文字。

「安産ですよ？」
「正しい答えを産み出せますようにー」
「あっ！なるほど！」
「ね？安産、安産！」

小さな白い袋に入れて貰ったお守りを手にした相葉先輩は

「翔ちゃん、出産ガンバ！」

満足そうに笑った。