コイカゼ・ダイブ 5th【ars M.A】 (ページ27)

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168.テヲ・ツナゴウ。ページ27

分かってる、綺麗ってゆーのはこの着物の事で

別に私を綺麗だなんて言ってるんじゃないって、ちゃんと分かってる。

だけど、相葉先輩の口から出た「綺麗」はやっぱり私の胸をギュっと掴んじゃって顔が熱くなる。

どうしたら良いのか分からなくて、手に持った巾着の持ち手を握り締めてると

頭のてっぺんから爪先まで視線だけじゃなくって顔まで動かしながら見てた先輩の目が、もう一度私の顔に戻って来た。

「ヤバイね！Aちゃん、すっごい綺麗！」

目尻にキュっと入る大好きな笑い皺。

大きな声が人で溢れる駅前に響いてしまって、先輩は「あっ！」って自分の口を慌てて押さえた。

私はもう、先輩の言葉にドキドキが止まらなくって

帯のせいなのか何なのか分からない位に、息苦しい。

「じゃあ、行こっか」
「あ...はい...っ！」
「人混みに行くから、ね」

そう言って私の手を取った先輩の掌は、ヒンヤリと冷えてて

その冷たい指が、私の指の隙間に滑り込んで来た。

当たり前のように繋がれた手が、嬉しくて嬉しくてニヤけるのを必死で堪えてると

「...人混みじゃなくても、手は繋ぐけど...ってか、繋ぎたいけど...」

先輩がこっちを見ずにボソボソとそんなコトを言うもんだから、ニヤけるとか通り越して顔が強張ってしまった気がする。

ツイードのダウンにちょっとゆったりしたジーンズを履いてる先輩は、今日も格好良くて

そんな格好良い人が自分の彼氏になったんだなんて、三日経った今でも信じられない。

茶色い髪が、風でふわりと揺れて

その度に私の心臓もキュンと鳴く。

微かに香る大人っぽい香水に、目を閉じてしまいそうになる。

神社までの道を、貰ったお年玉の事とか年始のテレビ番組の話をしながら歩く。

先輩の口元から、白い息が溢れ出すのに見惚れてしまいそうになって目を逸らした。

目的の神社に着き大きな朱い鳥居をくぐると「あ、真ん中は神様の通り道だから端っこ歩こうね」って私を参道の端に引っ張ってくれる先輩にドキンとする。

迷いなく手水舎へ行って「つめてー！」って言いながらもちゃんと手を清める姿が、素敵過ぎて写メ撮りたくなった。

でもその濡れた手を拭く為のハンカチは持って無くて手首をブンブン振って水気を落とそうとしてるトコも、何だか可愛くて結局好き。

「ハンカチ...良かったら」
「ありがと！さっすが女の子だねぇ」

先輩が使ったハンカチ、洗いたくないな...って思ってしまうのは仕方無いよね