コイカゼ・ダイブ 5th【ars M.A】 (ページ24)

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164.トリ・シラベ。ページ24

前に私が泣いてしまった時に連れてってくれた喫茶店に行くと

『新年の営業は四日から』

ってお知らせの紙が扉に貼ってあった。

「...閉まってる店もあんのか」
「潤ちゃんって、こーゆートコあるよね」
「アハハ！何だよ、こーゆートコって！」
「格好良いのに、何かマヌケってゆーか...」

そんな所も好きだけど。
あ、この「好き」はもうそーゆー好きじゃないから！...って心の中で相葉先輩に言い訳する。

「あ！ファーストフードとかなら開いてるんじゃね？」
「そうだね、駅前行こっか！」

２人で並んで歩いてると、女の人がよく振り返る。

やっぱり潤ちゃんはイケメンなんだなぁって、一緒に居るといっつも思う。
そんな潤ちゃんの左手薬指に指輪がある事を、今の私はもう素敵だと思えるようになった。

「あ、あそこのドーナツ屋にする？」
「えっ！？」
「え？A、ドーナツ嫌いだっけ？」
「ううん！大好き！」
「じゃ、ドーナツにしよ」

何だか私の中では『ドーナツ＝相葉先輩』になってしまってて、ドキっとする。

相葉先輩にちょっとだけ似てるアイドルがイメージキャラクターになってるあのお店に入って、並んでるドーナツを見ても「ライオンちゃん」って言ってた先輩を思い出してまたドキっとする。

「A、どれにする？」

相葉先輩と同じようにトングをカチカチする潤ちゃんにまでドキっとしてしまって、思わず「私が取ったげる！」ってトングとトレーをふんだくった。

ドキドキしながら、私は『ライオンちゃん』のノーマルとチョコを選ぶ。

潤ちゃんは、新商品のちょっとお高めのドーナツと昔から好きなハニーディップ。

それぞれカフェオレを頼んで、少しだけ混んでる店内に落ち着いた。

「さて。話して貰おうか」
「潤ちゃん、刑事さんみたい」
「洗いざらい話して、楽になりなさい」
「フフッ、えっとね...」

潤ちゃんは、私が相葉先輩と付き合うことになったって言うと「やっぱりなー」って笑った。

「女子は彼氏ができると表情が変わんだよ」
「そうなの！？」
「おじさん、寂しいだろうなぁ...」
「そんなコト...無いでしょ」
「あるよ。だって...」

綺麗な唇が、カップに触れてカフェオレを一口飲む。

「俺も寂しいもん。先輩くんにAを取られた気分」

アーモンド型の目が、優しく微笑んだ。