コイカゼ・ダイブ 5th【ars M.A】 (ページ21)

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161.シンヤノ・デンシャ。ページ21

夜中でも動いてる電車。

今日に限っては終電なんて無くって、深夜の街を走る。

運良く座れた席は隣同士キュウキュウで、いつもだったらこんな状況「おじさん、離れてよー...」なんてテンション下がっちゃうのに

今は、キュウキュウなお陰で先輩ともキュウキュウに引っ付けるのが嬉しい。

「Aちゃん、暑くない？」
「ううん、大丈夫です」
「マフラー、平気？」
「はい」

先輩が遠くにある方の右手で、私の口元まで上がってるマフラーをキュっと下げてくれる。

近い方にある左手は、ずっと、私の右手をギュって握ってて

その繋がれた手は、先輩の太ももの上に乗っかってる。

男の子の太ももって、硬いんだ...なんてのも、初めて知った。

周りに居る人は、私達をどんな風に見てるのかな...

ちゃんと、彼氏と彼女に見えるかな...

そんな事を考えながら先輩を見てるだけで、ドキドキして嬉しくて

「ん？」

私の視線に気付いて口角を緩く上げ優しく首を傾げる先輩に、さっきまでよりドキドキしてるみたいで

やっぱり、好きのテッペンなんて無いんだなって思った。

私んちの最寄駅に着いて、繋いだ手をブンブン振りながら家までの道を歩く。

「ねぇ、Aちゃん」
「はい？」
「一緒に初詣、行かない？」
「初詣...ですか？」

初詣って、私にとっては家族で行くのが普通で友達とも行った事が無かった。

「...行きたいです！」
「フフッ、うん。行こうよ！いつだったら行ける？」

いつ...明日は潤ちゃんが来るから...

「三日...なら大丈夫です！」
「明後日だね！じゃあ、約束！」
「はい、約束...」

繋いで無い方の手同士で、指切り。

そうすると、自然と向かい合わせになって

さっき抱き締められたコトを思い出して、俯いてしまう。

「時間とか、またLINEするね」
「はい...」
「ん？どしたの？」
「えっ！？...何でも...無いです」

またギュウってして欲しくなった...なんて、言えるはず無い！

そんなコト言ったら、えっちな子だって思われちゃう...。

指切りしてた指をスルリと離した先輩の掌が、ポンポンって頭に乗る。

顔を上げると、ほっぺに指をグイッて押し当てられた。

「ぷにゅぷにゅ」
「ぷ...？」
「Aちゃんのほっぺ、やらかい」

ツンツンと私のほっぺをつついて、もう一度頭をポンって撫で、先輩が歩き出す。

繋がれる手は、またブンブンと振られて

ちょっと後ろから見る先輩の横顔から、白い息がふわりと浮かんだ。