コイカゼ・ダイブ 5th【ars M.A】 (ページ2)

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142.ラッキー・ミー。ページ2

こんなグラスで飲み物を口にするのは初めてで、それにもドキドキする。

薄いグラスが唇に触れて

割ってしまいそうでヒヤヒヤしたけど、すぐにその美味しさに思わず剛さんを見た。

「お口に合った？」
「はい！とっても美味しいです！これ、オレンジと何が入ってるんですか？」
「パイナップルとレモンのジュース」

隣に座ってる相葉先輩が「うまそー」と呟く。

「じゃ、雅紀くんにも作ってあげよっか」
「うんうん！作ってー！ちょー楽しみ！」

はしゃぐ仔犬を窘めるように剛さんが、掌を先輩に向けてヒラヒラさせた。

シェーカーの中に何種類かのボトルから液体を入れて

また顔の横でシャカシャカとシェイクする。

グラスに注がれたのは、爽やかな緑色のカクテル。

「はい、お待たせ。Lucky Me」
「ラッキーミー？」
「そ。何か、雅紀くんに似合うでしょ」
「マジで！？俺、ラッキー呼んじゃう！？」

楽しそうに笑った先輩が、そのカクテルをグビッと飲んだ。

「...あれ？ねぇ、これお酒は？」
「ノンアルコールに決まってるだろ？まだ18なのに」
「えー...剛くん前は、お酒出してく...ブッ！」
「ちょちょちょっ...シーッ！こらっ！...お母さん達居るだろうが！」

慌ててカウンターの向こう側から手を伸ばし先輩の口をバチン！と塞いだ剛さんが、ヒソヒソ声で話す。

「絶対内緒だからな？分かった？」

剛さんの言葉に先輩がコクコクと頷く。

「ホント俺、店クビになっちゃうよ...」
「アハハッ！リンの彼氏もクビになっちゃうかもね」
「...雅紀くん...それ、シャレになんないよ？」

わざとらしく睨みをきかせて剛さんが凄むと、相葉先輩もわざとらしく泣き真似して「怖いー、ごめんなさいー」って返す。

そんなやり取りをしてる2人が、物凄く大人に見えて...
ってゆーか剛さんは大人だから、相葉先輩がすっごく大人に見えて...

格好良いのに、置いてかれてるような

変な気持ちになる。

「俺も飲も」

そう言って剛さんが手にした、カットレモンが飲み口に刺さった瓶に入った透明のお酒。

「良いなぁ。俺、それ好き」
「雅紀くん、その発言はよろしくないなー？」
「あっ...！あっぶねー！ギリギリセーフ！」
「ギリギリアウトだけどね」

相葉先輩は、私がまだ知らない味も

たくさん知ってるんだ。

それがやっぱり格好良いんだけど、寂しくもなる。

小さく息を吐いてシンデレラを飲むと

その甘酸っぱさに、喉の奥がキュッとなった。