空想男子アディクション【ars】 (ページ6)

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彼は『王子様』だ。

私はソファに腰掛けて、膝に雑誌を乗せて読む。

開いたページは見開きの記事で右上に『フラワー王子・松本潤』の文字。

「...センス悪いな...」

前々から思ってたけど、何でも王子つけりゃ良いってもんでも無いでしょ。
ハンカチ王子、ハニカミ王子...くらいでやめとくべきだったんだって。

でも、その文字の横にある潤の写真は確かに王子様だ。

別に王冠を頭に乗せてる訳でも、カボチャパンツを履いてる訳でも無くって、いつも着てる白いシャツを腕まくりしてるだけだけど。

写真の彼を指先でソっと撫でる。

「皆の王子様...だね」

ガチャ、っとリビングのドアが開いて慌てて雑誌を閉じた。

「はぁー、良いお湯だったー」

お風呂から上がった潤は肩にタオルを掛けて、ホカホカ上機嫌。

邪魔そうに掻き上げた濡れた前髪がオールバックになってる姿を見ると、彼は生まれる世界を間違えたんでは無いか？と思うけど。

お花背負ってる少女漫画の世界とか、もしくは中世ヨーロッパとか。
その辺りに誕生する予定だった人なんじゃ無いの？って、割と本気で想うけど

でも、私は知ってるから。

潤は完璧な王子様じゃないってコト。

残念だったり、可愛いとこがいっぱいあるってコト。

だから私にとっては、『フラワー王子』じゃなくって『松本フラワーショップの二代目』でしか無いの。

そして、大切な私の旦那様で

「あ、寝ちゃった？」
「うん。さっきコテンって」
「そっかー。フフッ、愛花ー」
「もー、起きちゃうってば」

ソファで眠る娘の頬を「可愛い」ってヘラヘラしながらツンツン突く、親馬鹿なパパさん。

「俺、ベッドまで運ぶわ」
「うん。お願い」

潤が、愛花をお姫様抱っこしてリビングを出て行く。

その後ろ姿を見て、少し寂しくなるのはいつもの事。

ずっと私のコトを「姫」だなんてフザけて言ってくれてたけど

きっと、今の彼にとってのお姫様は愛花なんだろうな、って。

ほんのちょっとだけ、昔を懐かしく思い出す。

「...ココアでも飲もうかな」

フゥ、と息を吐きだして私はソファから立ち上がりキッチンに向かった。

自分のマグカップを出して、ココアの粉末を入れポットのお湯を注いでたら

潤が戻って来た。

「あ、潤もココア飲む？」
「うん、貰おうかな」

てっきりそのままソファに行くと思ってたのに、キッチンに入って来た彼に

後ろから、ソっと抱き締められた。