空想男子アディクション【ars】 (ページ45)

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そこから取り出した物を、胸に隠すようにしてダイニングに戻って椅子に座る。

「プレゼントなら、もう貰ったよ？」

翔さんが何が欲しいのか分からなかったから、一緒に昨日の日曜に買い物へ行って新しい通勤用の鞄を買った。

もちろん、それもプレゼントなんだけど...

「もう一つ、と言いますか...」
「えー、何か悪いなぁ」
「あーでも、私にもプレゼントと言いますか...」
「ん？あ、さっきのケーキの事？え？」

よく分かんない、って感じで首を傾げてる翔さんの前にさっき引き出しから出して来た物をスっと差し出した。

それを手に取った彼は、一瞬だけ「何？」って顔をしたけどすぐに理解して大きな目を更に大きくした。
ついでに、お口もポカンと大きく開いてる。

「9月の始めには、三人家族です」

何だか照れ臭くって、俯いて笑うと翔さんがガタンッ！ってすごい音を立てて椅子から立ち上った。

「う...っそ...」
「ホント、です」
「...マジ...俺、お父さんになんの...？」
「はい」
「......うっそ...すっげぇ...」

立ち上がってた翔さんは、自分が何で立ってるのか分からなくなったらしく今度はガタンッ！って音を立てて座った。

「俺も...父子手帳作らなきゃ...」
「父子手帳？」
「だって、これからのスケジュール！？ほら、検診の予定とか！俺もついて行きたいじゃん！我が子の成長記録も書かなきゃだし！」

また、ガタンッ！って立ち上がって、今度はズンズンと私のとこまで歩いて来て隣の椅子に座った。

「......ありがと、こんな誕生日プレゼント貰えると思ってなかった」
「翔さん...」

私の両手を取って、真っ直ぐに目を見てくれる。

「俺を父親にしてくれて、本当にありがとう」

その言葉に、ボロって涙がこぼれた。

何も言えなくって、首を振るしか出来ない。

ボロボロこぼれる涙を、翔さんが自分も泣きそうな顔をしながら拭ってくれる。

その表情に、また泣ける。

「...翔さん...」
「ん？」

もう、どうにかして、その顔。
何て優しい顔をするの？

そんな顔されたら、私は面倒な女になってしまうのに。

「赤ちゃん産まれたら...翔さんは子煩悩になりそうですね」
「え？」
「赤ちゃんに翔さん取られたって、思っちゃいそうです...」
「......」
「あー、もう...こんな事言っちゃって、母親失格かもしれない...」

ちょっと自己嫌悪して翔さんから目を逸らした私を、彼がギュっと抱き寄せた。