空想男子アディクション【ars】 (ページ43)

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■空想アニバーサリー【S】ページ43

これでもかって位に苺が敷き詰められていて、真っ赤に見えるホールケーキは

どっちかと言えば、翔さんよりも私の方が『これ食べたい』と思ってるかもしれない。

でもきっと、翔さんはそんな事お見通しだ。

強気な値段のケーキ屋さん、ラトルメンタの箱を見た翔さんは何も言わずに微笑んだ。

「特別な日ですからね！」
「ありがと」

ジャンジャジャーン！って掛け声と共にケーキを箱の中から引き抜くと、「ブハッ」って笑われた。

「アハハッ、何その掛け声」
「えー...言わないですか？いよいよ発表です！みたいな時に」
「ホンットAちゃんって、雅紀と似てるよね」
「褒められてるのか貶されてるのか微妙なんですよね、それ」

相葉くんは優しいし良いヤツだけど、天然だし賑やかだし...私はあそこまですっとぼけては無いと思う。

「そんな事より！見て下さい！」
「すっげぇ苺！真っ赤だね」
「美味しそうでしょ？」
「フフッ、これってAちゃんが食べたかったケーキだよね」

ほら。
バレてる。

「...何で分かったんですか？」
「だってラトルメンタに行ったら、いっつも絶対にこのケーキ見てたもん。物欲しそーぉに」
「物欲しそうって！...失礼な」
「違う？」

プリンや焼き菓子だったら、庶民な私達にも手が届くからって(無理やり翔さんを引っ張って)時々ラトルメンタへ行く。
お会計を翔さんがしてくれてる間、私はショーケースに鎮座してるこの苺だらけのホールケーキを見詰めてた。

そう。
物欲しそうに見てたんじゃない。

「愛おしそうに見詰めてたはずです」
「じゃあ、そうゆー事にしとこっか」

意地悪にニヤっと笑った翔さんの肩を、パシっと叩いた。

「でもほら、これがあるから翔さんのケーキです」

『HappyBirthday！dearSHO』と描いてあるチョコのプレートを指差すと「こんなトコまで、何かシャレてんね」ってマジマジ見てる。

大切な人のお誕生日。

出来れば仕事を休んでお祝いしたかったけど、翔さんも私も社会人。
今日は普通の月曜日。
翔さんは、さっき仕事から帰って来た。

料理が得意で無いなりに、頑張ってネットとか料理本で調べて作ったパーティーっぽい料理を食べ終わったタイミングでこのケーキを出した。

部屋の電気を消して、真っ赤なケーキにろうそくを刺し火を灯すとその明かりの向こう側に

優しく微笑む、貴方。

貴方の誕生日なのに、まるで私がお祝いされてるような幸せな風景。