４ ページ35
その緩く上がった口元が、私の唇に重なって
すぐに離れて、もう一度軽く触れる。
「Aの夢も、叶えてあげるから」
少しだけ触れてる唇が、囁いた。
「Aが、一番行きたがってた教会に連れてったげる」
「...え...？」
「新婚旅行」
「...えっ！？うそっ！？」
「声でかっ！」
フハハッ！って仰け反るようにしてニノミヤが笑う。
「行きたかったんでしょ？ノートルダム大聖堂」
「......うん...」
「じゃ、新婚旅行で行こうね」
予想もしてなかった提案に、胸が苦しくなる。
確かに、ニノミヤに話した事があった。
ノートルダム大聖堂を、死ぬまでに見てみたいって。それが夢だ、って。
でもそれ、本当に世間話の中で言っただけなのに。
そんな事を覚えててくれた事が、何より嬉しい。
「そこで、キリスト様にも誓うから。永遠の愛、ってやつ」
もうやだ、何なの。
「誓いのキスもしちゃおっか」
何も言わない私の目の下をニノミヤが指で押し撫でた。
「なーんで泣くのよ」
「...何でかなぁ...」
「マリッジブルー？」
ンフフ、って彼が笑ったと同時にスマホの着信音が部屋に響いた。
「...んだよ、こんな時間に...」
チッ、と舌打ちしたニノミヤが私の頭をポンと軽く撫でながら立ち上がって
テーブルの上のスマホを手に取る。
「あー...またかよ...」
私に表示されてる着信相手の名前を見せる。
何度もニノミヤを突然呼び出してる、例の作家さんだ。
「ごめんな、出るわ」
「うん」
電話に出た瞬間に、もう彼の声は仕事用になる。
「もしもし、先生。どうなさいましたか？ンフフ、何言ってんですかー」
私に背を向けて仕事をしてるニノミヤを見て、何だかまた涙が溢れた。
何でなのか、自分でもよく分からない。
だけど、ひとつだけ分かってるのはマリッジブルーなんて私には縁の無い話なんだな...ってコト。
毎日毎日、この人を好きで仕方無い。
毎日毎日好きになって行く想いが、止まらない。
「はい、明日ですね？大丈夫ですよ...ぉっ...！？あ、いえ！何でもないです、アハッ」
突然背中から抱きついた私に、ニノミヤは一瞬驚いてたけどすぐに空いてる手で頭をポンポンと撫でてくれた。
電話を終えた彼に、意地悪な顔で「どしたのよ」って言われるのは想定内。
私は何も答えず、甘い恋人の背中をギュッと抱き締めた。
・・・END『ハニークローズ』・・・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5745人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2015年7月9日 18時
