空想男子アディクション【ars】 (ページ30)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:1,669,905 hit

２ページ30

「おかえりなさい、雅紀くん」
「おぅ、今帰ったぞ！」
「フフッ...何それ」
「亭主関白ごっこ」

アハッて楽しそうに笑った彼が、玄関に入って靴を脱ぐ。

たくさん靴を持ってる雅紀くんが、どんな靴を履いて来るのかを見るのが好き。

今日は、白黒コンビのレースアップシューズ。
ドレッシーな感じの靴なのにジーンズに合わせちゃうんだ、格好良い。

「可愛い...、その靴」
「ありがと！ニノと彼女にオススメした靴がコンビ靴で可愛くてさ」
「じゃあお揃い...？」
「ううん、さすがにお揃いじゃないよー！その靴に似てるのがこないだ入荷したから買い取ったの」

楽しそうに話してる雅紀くんが、私を見て表情を変えた。

「Aちゃん...？」
「ん...？」
「顔色...」
「あ......いっ...た...」

痛み、というか重みの波が来てお腹をギュウっと両腕で押さえる。

「Aちゃん？大丈夫？」
「ん...ダイジョブ...」

全然大丈夫じゃないくせに、強がってしまう。
だって、心配かけたくない。

だから今日会うのやめとこうって思ったのに...

「ダイジョブだから...あの...」
「これのどこが大丈夫なの。とりあえず、あっち行こ」

雅紀くんがヒョイって私を抱き上げた。

こんな時なのに「お姫様だっこー！」とか思っちゃって嬉しくて

でも体は辛くてしんどくて。

もう、どんな感情なんだか自分でも分からない。

「涙目になってるよ」

微笑んだ雅紀くんが、私の目尻を指でなぞった。

「......ありがと...ごめんね...」
「フフッ、何で謝るの」

私をベッドに下ろして、布団を掛けてくれて子供にするみたいに布団の上を掌でポンポン。

「風邪ひいちゃった？」
「あ...風邪じゃ無いんだけど...」
「違うの？じゃあ、どうしたんだろうね...」

雅紀くんが、うーん...って私が何故体調悪いのかを考えてる。

「あの...雅紀くん...」
「ん？」
「病気じゃないし...毎月の事だから大丈夫だよ...？」
「...あっ！そっか！ごめん！」

何で雅紀くんが謝るんだろうって思うけど、アワアワしてる姿が何か可愛くて

「こーゆー時はお腹をあっためなきゃダメなんだよね？」

台所借りるよ！って、キッチンに入った彼は冷蔵庫から柚子ジャムを出してホットゆず茶を作ってくれた。

「Aちゃんがゆず茶好きなの知ってるんだよー」

マグカップを持った彼が、ベッドに腰掛け私の背中を支えて起こす。

甘い湯気の向こうの雅紀くんが、フーフーってゆず茶を冷ましてくれた。