額に傷を持つ2人～謎のプリンス～起③～ハリー･ポッター (ページ10)

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モ｢A、もう行きなさい。できれば今晩中にトランクを準備して欲しいわ。いつもみたいに出がけに慌てることがないようにね｣

次の朝、トランクを準備しておいたお陰で、いつもより出発の流れが良くなっていた。それもこれも昨日のおばさんの言葉のお陰だろう。

魔法省の車が、隠れ穴の前に滑るように入って来た時には、皆そこに待機していた。

トランクを詰め終わり、ハーマイオニーの猫、クルックシャンクスは旅行用のバスケットに安全に閉じ籠められ、

フォルとヘドウィグとロンの梟のピッグウィジョン、それにジニーの新しい紫色のピグミーパフのアーノルドは、それぞれの籠におさまっていた。

動物では、私の黒蛇のトムだけが籠に入ることを頑なに拒み、私の首に巻きついて離れないものだから、籠に入らずに済んでいた。

『籠に入ればいいのに』

トム｢僕は、動物になってはいるけど、動物のような扱いは受けたくないね｣

ツンとした言葉と、フラーの声がタイミングよく重なって、頭の中で誰の声なのかを処理するのに時間がかかる。

別れの挨拶を済ませている中、フラーは、大胆にも私をギュッと引き寄せる。

『うわ、フラー？』

フラ｢オールヴォワ(さようなら)、A｣

フラーがお別れのキスをしながら、ハスキーな声で言う。私は、いつものケラケラと笑う顔を見せながら、別れの言葉を口にした。

ロンは期待顔で進み出すが、ジニーの突き出した足に引っ掛かって、フラーの足下の地べたにぶざまに転倒してしまい、カンカンに怒って、まっ赤な顔に泥をくっつけたまま、ロンはさよならも言わずにさっさと車に乗り込んだ。

『ジニー、あんまり悪戯するのは良くない』

ジニ｢あら、ロンにはああ、するべきだったわ。だってすぐに調子に乗るんですもの｣

ジニーは、ニヤリと笑みを見せて、私は手に負えないように頭を抱えて車に乗り込む。

やっぱりジニーは、フレッドとジョージによく似てる。少し、困らせられることが多すぎるような気もするけど。

車から入るそよ風に吹かれながら、駅に着くのをまだかまだかと心待ちにした。

キングズ・クロス駅で待っていたのは、陽気なハグリッドではない。

その代わり、マグルの黒いスーツを着込んだ厳めしいヒゲ面の闇祓いが二人、車が停車するなり進み出て一行を挟み、誰にも口を利かせることをせずに駅の中まで誘導する。

私の気分は少し落ち込んだ。どうせならハグリッドが良かった。その方が気分がもっと晴れた。