額に傷を持つ2人~不死鳥の騎士団~終④~ハリー･ポッター (ページ30)

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ニッ｢お役に立てなくて、残念です｣

そうニックは優しく慈しみある声で、ハリーに声をかけた。そしてニックは、大広間に向かうようにして壁の中に消えた。

ハリーの落胆した呻き声が私の耳に届く。

そうか、そうか。シリウスは、死んだのだ。

まだ受け入れられないけれど、もう彼がこの世界に帰ってくることもないし、現れることも無い。

トムやニックのおかげで改めて心の中を整理出来たような気がする。後で、トムに謝らなければいけない。気付かせてくれて、ありがとう、って。

まだ、心には穴が空いているけれど、それでも大丈夫なぐらいに。

きっと、そばにいるだろう。あのベールのすぐ裏で人が話す声が聞こえたのだから。

きっと、見えないだけでそばにいるに違いないんだ。

その時、すぐ隣で金木犀の香りがしていることに初めて気がついた。

翌日。ホグワーツ特急に乗り、ハリー、ロン、ハーマイオニー、ジニー、ネビルと共にコンパートメントに入る。

やけに心が落ち着き、心地の良い空が列車の窓から伺えた。

ハリーとロンは、大鍋ケーキとかぼちゃパイを山ほど買い、ハーマイオニーは、また日刊予言者新聞を読み。

ジニーは、ザ・クィブラーのクイズを楽しんでいて、ネビルはミンビュラス・ミンブルトニアを撫でさすっていた。

この一年で相当大きく育ったその植物は、触れると小声で歌うような奇妙な音を出すようになっている。

そして私は、ゆっくりと本を開いて、黒猫を膝の上に乗せて、まったりと気ままに過ごしていた。

ハリーとロンは、この旅程のほとんどを、ハーマイオニーが読んでくれる日刊予言者新聞の抜粋を聞きながら、魔法チェスをしていた。

現在の新聞は、ディメンター撃退法とか、死喰い人を魔法省が躍起になって追跡している記事、家の前を通り過ぎるヴォルデモート卿を今朝見たと主張するヒステリックな読者の投書などで溢れ返っている。

「まだ、本格的じゃないわ」と言ったハーマイオニーが暗い顔でため息をつき、新聞を折りたたむ。

『仕方がないよ────でも、遠からずってとこさ』

本から目をあげないで、のんびりとした口調で言うと、ホッとしたようにハーマイオニーが笑うのが感じられた。

「おい、ハリー」と、ロンがガラス越しに通路を見て頷きながら、そっと呼ぶ。

ハリーは振り返り、チョウが目出し頭巾を被ったマリエッタ・エッジコムと一緒に通り過ぎるところでハリーとチョウが目を合わせる。