第37話 ページ44
…
有希子さんとお茶会をした夜。
私はなかなか寝付くことが出来なかった。
理由は言うまでなく、彼の話をしてしまったから。思い出してしまったから、彼を。
「…はぁ。馬鹿だなぁほんと。」
どれだけ探しても、どれだけ会いたくても、もうこの世に居ないことくらい頭の中では分かっているのに。
1つ1つの想いが、泡のように膨らんでは弾け消えていく。深い海の中、私は未だに這い上がることすらできない。
泳いで、溺れて、どんどん海の底に引き込まれて。もしかしたら生きてるかも、そんな期待すら泡となって消えていく。
『罪な人ね。』
有希子さんの言葉が頭の中で響く。
そうだよ、あの人は罪な人。そんでもってとてもズルい人。
期待も会いたいという気持ちさえも奪っていく癖に、1番奪って欲しい気待ちは消してくれない。
「…赤井、さん。」
私、あなたが好きです。
そう言えたらどれだけ楽だろうか。
「…あーもう、ダメだ」
忘れたいのに、やっぱり忘れられないよ。
私があの世に行ったら、絶対1番に会いに行って伝えてやるんだから。
ずっと胸の中にしまい込んでいた、この気持ちを。
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作者名:ロゼ | 作成日時:2019年6月17日 22時