満月の夜に願いましょう【赤井秀一】 (ページ43)

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第36話ページ43

有希子side

昼間見た、彼女のあの切なそうな瞳があれからずっと頭から離れなかった。

会いたい、でももう会えない。忘れたい、でも忘れられない。こんなに辛いならいっそ嫌いになってしまいたい、でも嫌いになれない。

いつも明るく前向きな彼女が、初めて私の前で弱味を見せて、目から零れ落ちそうな涙を必死で堪える姿を見て、

あぁ、なんてーーーー

「優しい子なんだろう…って思ったの。」

家の前で彼女を見た時、いつになく元気のないような気がして無理やりお茶に誘った。少しでも明るい話が出来ればと恋愛の話を持ち出して。

でも、まさかあの子が思っている人が、

あの人だなんて、思わなかった。

『会いたい』

『好き』

『悔しい』

色々な感情が話をすればするほど彼女を追い詰める。辛そうな目の前の健気な娘を見て、酷い言い方かもしれないが、少し安心した。

いつもいつも明るい彼女も、ちゃんと人間だったのだと。

顔を歪めて「ごめんなさい、空気を悪くしてしまって」と言ってすぐ再び元の明るい彼女に戻ってしまったけれど。

(…謝るのは貴方じゃなくて私達なのよ)

その場で全てを打ち明ける事ができてたら、彼女は本当に心から笑う事ができるだろうにと酷い罪悪感に包まれた。