第35話 ページ42
no side
「ねぇ新ちゃん、一つ提案があるんだけど。」
分厚い本を膝の上に広げて黙々とページをめくる愛しい我が息子、工藤新一(江戸川コナン)に後ろから抱きついた有希子はいつもとは違う真剣な声裏で また何かを言い始めた。
新一はと言うと、どうせまた良からぬ事でも思いついたんだろう。と実の母親である有希子に冷たい視線をやって「今度は何だよ」と一つ言葉を返した。
「実はね、Aちゃんに…どうしても会わせたい人がいるの。」
「Aさんに?」
何のことかと思えばそんなことか。新一は有希子の提案に「別にいいんじゃね?」と軽く返す。しかし明らかに面立ちが暗い有希子を見てこれは何かあるのだろうと本を閉じ、向き直った。
「Aちゃんを、例の彼と会わせてあげたいの。」
有希子の口から出たのは思いもよらない言葉だった。
いや、別に会いたいと思うのは不思議な事ではない。彼女もあんななりをしているが実際は現役FBI。死んだ仲間が生きていたとなればそりゃあ会いたいに決まっている。
だが、
「…会って、その後はどうすんだ?」
新一だって知っている。
彼女があの人のことを好きなことくらい。
絶対に失いたくない人の1人だったことくらい。
でも、だからこそなのだ。
「今、会わせても…Aさんが辛い思いするだけだろ。」
だからこそ、2人は今、会うべきではないのだと新一は言った。
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作者名:ロゼ | 作成日時:2019年6月17日 22時