満月の夜に願いましょう【赤井秀一】 (ページ36)

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第30話ページ36

…

｢それで？結局夏休みの予定は？｣

｢スケジュール帳が未だ真っ白です……｣

テーブルに頭を垂れて、歳に似合わず(小学生の姿だけど)うわーんと声を上げる私を見て目の前の女性は上品に口元に手を添えて楽しそうにクスリと笑った。

笑えないよこの状況。なんで？夏休みなのにどうして遊びに行こう！ってならないの？まともに説得すら出来なかった私が何言ってんだって感じだけど楽しむ気はないのかあの若者2人は！

｢あらあら。せっかくの夏休みなのに2人とも冷めてるのねぇ｣

｢1人はあなたの息子でしょ有希子さん！何とか言ってくださいよ～｣

｢えー無理よぅ。優作に似て言い出したら聞かないんだものあの子。｣

でもそんな所も可愛いでしょ？という有希子さんに首を縦に振ってからゆっくりと起き上がる。新一くんも可愛いけど有希子さんも十分可愛いと思うのは私だけだろうか。目の保養、ありがたい。

｢そういえばその優作さんは？｣

｢優作なら今ロスのホテルでお仕事中よ。あなたによろしくって言ってたわ。｣

｢人気推理小説家も大変ですね…尊敬します。｣

｢あら、そういうあなたもFBI捜査官じゃない。｣

｢今は無断で長期休暇中ですから…｣

コーヒーカップに口をつけてそれを斜めに傾ける。フワリと香った独特の香りと｢そういえばそうだったわね｣と優しく微笑む有希子さんを見て心が少し晴れた気がした。