第19話 ページ23
…
「何をそんなに焦っているんですか。」
沖矢さんにそう言われた瞬間、一瞬にして目の前が真っ暗になった。
まるで自分の弱い心を、何度も殴り刺しされてるような感覚に襲われて、思い出したくもない出来事がフラッシュバックし、考えが悪い方へばかり言ってしまう。
焦っているつもりはなかった。でも目の前で人が殺されるのは嫌だった。下手に大事にされても哀ちゃんも私も面倒だし、峰打ちでもして犯人の動きを止めた方が周りも少しは落ち着くと思った。
断じて、あの店員さんを、あの人に重ねてしまったわけじゃない。
ただ、あの日の事を今でも鮮明に覚えているからこそ、もう後悔をしたくないとは思った。
だから、違う。
「ーー焦ってなんか、ないです。」
自分でも分かった。さっきよりもか細く震えた声になっているのを。
私の様子を心配して、哀ちゃんが「…Aちゃん?」と顔を覗き込んで来たけど、久しぶりにちゃん付けされて嬉しかったとか、そんな感情は全く感じられず、
ただ固まってしまった。
沖矢さんのたった一言で、風の音も、犯人の怒鳴り声ももう感じない。
感じるのは、あの匂い。
いつも私を安心させてくれた、彼が吸っていたタバコの匂い。
「ーーだ、れ?」
「… …、」
目の前にいる、あの人の匂いを纏ったこの人は一体何者なの?
あなたは、、、
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更新をだいぶお待たせしてしまいすみません。
今日からまた更新していきますのでよろしくお願いします!
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作者名:ロゼ | 作成日時:2019年6月17日 22時