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Aside
「また今度ね」
「ああ、また」
ピッ
「はぁ…」
私は画面に映る終了ボタンを押してため息をついた。ベランダで兄さんと電話をしていたのだが、正直ヒヤヒヤしながら会話をしていた。兄さんは誰よりも早く私の異変に気が付くので精一杯の空元気がバレないか不安だったのだ。恐らく明るく振る舞うことはできただろう。完璧だったとは言い切れないが。
私はちらりと空を見上げた。今日は日が沈むのが早くまだ7時にもなっていないのに空には無数の光がある。
綺麗だな…
星を少し眺めた後、部屋に入りベッドにダイブした。この家は一人暮らしに最適だ。キッチンもリビングもそれなりに広くてベランダ付き。お風呂とトイレも別で何よりバスタブが大きい。いい物件を手に入れたとものすごく満足している。
だが______
プルルル、プルルル、
「…!?」
もしかして…また?
私はベッドから起き上がりドアの近くに設置した電話に向かった。そこにはいつも通り非通知の文字。
怖いな…出たくない…でも全く別の人かも…
私は震える手を一度ギュッと握りしめて受話器を手に取った。
「は、はい、衛藤です」
「あ、Aちゃん?今日は出てくれたねぇ〜?」
「ひっ…!」
私は受話器から聞こえてくる声に怯え、受話器を叩きつけるように戻した。
やっぱり、あの人…また、いつもの…
私はバクバクと心臓が鳴り響くのを感じながら肩で息をする。
今の人はほんの数週間前からいきなり電話をかけてくるようになった、名も知らない男の人だ。電話に出た瞬間、私の名前とマンションの住所を早口で言い、会いたい会いたいと何度も口にしてきた。どこでそんな個人情報を入手したのか。なぜ私を狙うのか。理由があるとすれば、私の兄である衛藤昂輝のことぐらいだ。兄さんは人気者なので、妹の私に会えば兄さんと関わることができると思ったのかもしれない。
どんな理由にしろ、とても怖い。誰かに相談したいが警察など事件が起きないと動かないので当てにならない。それは前に嫌というほど痛感した。
兄さんもダメ。兄さんはただでさえ忙しいんだ。相談するなんてできない。さっきは我慢できずに電話をかけたが、口を滑らせなくてよかったと今は凄く安心している。
家族も勿論ダメ。心配性の母さまは絶対慌てて大ごとにする。それに兄さんに話が入る可能性が非常に高い。父さまも仕事が忙しい。迷惑をかけたくないのが本音だ。友達にも話しずらいし…
私は1人ぐるぐると思考を巡らせる。
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作者名:ナツ | 作成日時:2022年10月21日 0時