愛され狐は今日も泣く

27話 ページ29

「千里ちゃん！」


呼ばれて優ちゃんと坂田さんの方へ行く。

そこには知らない2人もいて。


「紹介するね！」

「知ってるかな？この人達、歌い手のそらるさんとまふまふさん！」


なぜか優ちゃんが自慢げに教えてくれた。

あ、知ってる。

聞いたことある名前に少し安堵した。


「そしてこの子はセンラさんの妹！！」


いや、だからそんな自慢げに言うことではないと思うけど…。


「へー、センラくんの」


声が聞こえて優ちゃんに向けていた視線を向ける。

私をじろじろと見定めるように見るのは、きっとそらるさん。

なにをこんなに定めたいのだろう。

よく分かんないけど、同じように視線を向ける。

すると、そらるさんは急に表情が和らいだ。


「名前は？」


さっきとは違う、柔らかい笑顔だった。


『千里、です』

「…そう」


そらるさんはそれしか言わなかった。

よろしく、もなにも無かった。

まぁ、よろしくしないならそれでもいいけど。

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