248時間目 ページ10
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美味しかった!と喜んで帰っていく松方や園の子どもたちを見送って、秀華は調理に戻った。
「秀華って子供好きだよね。」
「えぇ。見ていてこちらも元気を貰えるし、可能性の塊って感じがして応援したくなるの。」
「そっか。将来はそういう関係の仕事?」
「そう!塾を開きたいの!」
カルマにそう声をかけられて、秀華は嬉しそうに答えた。夢を語る彼女の顔はパァッと明るく、それでいて優しい笑顔だった。そんな顔が愛おしくて、カルマの顔も綻ぶ。
その時。あたたかな雰囲気を崩すように、軽薄な声が響いた。
「渚ちゃーん!!遊びに来たぜー!!」
「げ!! ユ、ユウジ君!?」
ユウジと呼ばれた男に、秀華は見覚えがあった。島のクラブで女装した渚に声をかけた、有名司会者の息子。司会者の方と知り合いの秀華は、気づかれたくないからとその時は片岡の影に隠れていたのだ。
「島のクラブで“渚ちゃん”をナンパした法田ユウジくん。」
「法田?」
「知っているの?」
「なーんか最近聞いた名前な気がするんだよね。」
「彼の父親は有名司会者よ。それじゃないかしら?」
ならそれかな、とカルマはぽつりと呟いて行ってしまった。大方、渚をからかいに行ったのだろう。その渚は何やら中村にスカートを履かされて、ユウジの接待を任されていたが。
ユウジからの注文を皮切りに、だんだんと注文が増え始める。不思議に思って窓から外を覗けば、殺せんせーを殺せなかった殺し屋たちで席が埋まり始めていた。
「こんだけ揃うと壮観だよな…。」
「殺せないとわかっているから大人しいのね…。」
「ただ、人数は増えたけど、A組の集客ペースにはとても及ばない。」
あまりに多い殺し屋たちの数に圧倒される磯貝と秀華。だが、悔しそうに竹林が告げた。磯貝と秀華もその言葉に、苦い顔。
「あ。」
「どうした浅野。」
「法田、ユウジって…。」
ふと何かを思い出したように声を上げた秀華は、カバンから携帯を取り出した。そして開いたのは、カルマと一緒に行かないかと見せたことのある飲食店の公式ホームページ。そこのNEWSに書かれた“あの有名グルメブロガーに紹介してもらいました!”の文字をタップすれば、別のページへ飛ぶ。
「やっぱり!!」
そのページのタイトルは“ボンボンが行く!!法田ユウジの食べ歩き日記”。
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麗(プロフ) - 29ページ 頃について 殺せんせーに とかではないのでしょうか? (2021年5月22日 1時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ざくろ(プロフ) - まなぴすさん» 優しいお言葉ありがとうございます!! 一人暮らしの予習だと思って頑張ってきます(料理以外てんでダメ)…( ˇωˇ ) (2021年3月4日 9時) (レス) id: d0e69d8f04 (このIDを非表示/違反報告)
まなぴす(プロフ) - お母様のご様子が心配です…!無理せず自宅の方専念されてください!ずっと待ってますのでー!! (2021年3月4日 0時) (レス) id: 1ee9da6645 (このIDを非表示/違反報告)
ざくろ(プロフ) - カナナさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけてとても嬉しいです(´˘`*)私もこの章大好きです!!秀華ちゃんが理事長の娘である以上、この章に力入れて書きたいと思いますので更新待っていてくださいね(^ ^) (2021年3月1日 1時) (レス) id: d0e69d8f04 (このIDを非表示/違反報告)
カナナ - ざくろさんが書くお話が大好きです!!!!文の表現がとても上手で分かりやすいです。ここから私が好きな章なのでとても楽しみです。これからも無理のないよう頑張って下さい。応援してます。 (2021年3月1日 0時) (レス) id: 6af05f93ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ざくろ x他1人 | 作成日時:2021年2月23日 23時