252時間目 ページ14
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「あっ、秀華ちゃん!おかえり!」
「イトナ君の偵察機で見てたよダンス!」
「カルマ〜。浅野とダンスなんて羨ましい限りだな!」
カルマと秀華がE組に戻ってくると、にやにやと笑いながら生徒たちが2人を出迎えた。少し恥ずかしそうにしながら、彼らの輪に入っていく。
「…ねぇ、カルマ。」
「んー?」
「楽しかった。また踊ってくれる?」
ふにゃりと笑って自身に問う秀華を見て、カルマの心の靄は掻き消えた。愛らしいその顔は、学秀と踊っていた時のものとはまた違う。この顔は自分しか見られないのだ、と気づいて嬉しくなった。
「うん…また踊ろっか。」
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本校舎の掲示板に学園祭での総合成績の速報が張り出された。A組は高校の店を抑えトップ。E組もまた3位にランクインした。それを受けて、学秀を含む五英傑は理事長室で、理事長と対峙していた。
E組に圧倒的大差をつけられなかったことを咎められるのだろう、と学秀達は予想が着いていた。
「僕らは努力の全てを注ぎ込みました。勝利に満足しています。」
「ほう……随分と接戦だったようだが…?」
「それだけE組に戦略があったということ。圧倒的大差をつけるのはほぼ無理かと。」
「違うな。」
学秀の言葉に、理事長は強く言った。
「君は害する努力を怠ったんだ。」
飲食店なのだから悪い噂を広めたり、食中毒にすることも可能だった。そう言い放った理事長に、彼らは背筋が凍った。その言葉に険しい顔をして、学秀は口を開く。
「……理事長先生、貴方の教育は矛盾している。どうやったか知らないが、E組はこの1年で飛躍的に力を伸ばした。僕ら選ばれたA組と張り合うほどに。癪だが、僕自身も能力の伸びを感じます。奴等が刺激になっていることは否定できない。
強敵や手し…いや、仲間との縁に恵まれてこそ強くなれた。」
「今お前手下って言いかけたろ。」
学秀の言葉に思わず瀬尾がツッコミを入れた。だが、学秀の言葉に五英傑達は賛成だった。学秀の脳裏を、秀華の言葉が駆け巡る。歪んだ強者しか作れない。そう言い放った秀華の悲しげな声。
あぁ、そうだ。こうして環境に恵まれて、僕は能力を伸ばせた。秀華、お前の言った通りだったよ。
「弱い相手に勝ったところで、強者にはなれない。それが僕の結論であり、それは…貴方の教える道とは違う。」
学秀が秀華の言う、仲間の居る世界を掴んだ瞬間だった。
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麗(プロフ) - 29ページ 頃について 殺せんせーに とかではないのでしょうか? (2021年5月22日 1時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ざくろ(プロフ) - まなぴすさん» 優しいお言葉ありがとうございます!! 一人暮らしの予習だと思って頑張ってきます(料理以外てんでダメ)…( ˇωˇ ) (2021年3月4日 9時) (レス) id: d0e69d8f04 (このIDを非表示/違反報告)
まなぴす(プロフ) - お母様のご様子が心配です…!無理せず自宅の方専念されてください!ずっと待ってますのでー!! (2021年3月4日 0時) (レス) id: 1ee9da6645 (このIDを非表示/違反報告)
ざくろ(プロフ) - カナナさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけてとても嬉しいです(´˘`*)私もこの章大好きです!!秀華ちゃんが理事長の娘である以上、この章に力入れて書きたいと思いますので更新待っていてくださいね(^ ^) (2021年3月1日 1時) (レス) id: d0e69d8f04 (このIDを非表示/違反報告)
カナナ - ざくろさんが書くお話が大好きです!!!!文の表現がとても上手で分かりやすいです。ここから私が好きな章なのでとても楽しみです。これからも無理のないよう頑張って下さい。応援してます。 (2021年3月1日 0時) (レス) id: 6af05f93ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ざくろ x他1人 | 作成日時:2021年2月23日 23時