傍観者42人目 ページ43
いつも通りの姿をした空の色は、人を慰める事を知らない日常の色と同じだった。
誰かが悲しみにくれたってそっぽを向いて知らん顔。
なぁんにも知らないふりをしていつもと同じを装って逃げる。
誰が作ったのか分からない5時までに家を帰るというルールを律儀に守る子供達が僕の横を通り過ぎて行く。
ぎぃぎぃと子気味の悪い音を立てながら揺れるブランコの音がやたらと頭に響く。
まだ帰らないのかな、と思って視線を向けてしまった僕は後悔した。
そこに居たのは、さっきシャムに見せてもらった月満Aの写真と瓜二つの少女だった。
瓜二つ…というより本人だ。
それを理解した途端、僕から殺気が溢れたのが自分でも分かった。
隠れた右手からぼたりと椿の花が落ちる。
殺しにかかるつもりで刀を構えた時。見てしまった。
月満Aの目には光が無い。あるのは絶望だけ。
頬には涙が伝った跡があった。
__あぁ、そっか。
あの子も怠惰の兄さんみたいに、迷いながら殺したのか。
しょうがないって、方法はこれしなかないって自分で言い聞かせて。
脆いね、本当に。
そんな理由で大切な人を自分の自分の手で殺すなんて。
・
・
ブランコに座る少女の目は開いているのに、目の前の景色は見えていない。
遠くを見ているわけでも、空の色を目に映している訳でもない。
ただ、呆然とした様子で顔を上げて目を見開いて、頭の中では柊のと思い出を巡らせていた。
一緒に笑いあった日の事。
一緒に泣きあった日の事。
お互いを否定しあった日の事。
お互いを肯定しあった日の事。
そして、
「A…お前の手で俺を殺して」
彼と最後の瞬間の事も。
『…ごめん』
少女が届かない懺悔を口に出すと同時に、枯れたはずの涙がまたポツリと流れ出した。
その涙を見た狐もまた同じように涙を流した。
日常の色をした空は、そんな二人を無視していつも通りオレンジ色に染まろうとしていた。
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まっちゃ* - とても面白い作品でついつい読みいってしまいます!後こゆきの漢字は虎に雪で虎雪ですよ! (2018年5月13日 22時) (レス) id: cd2ef48f8b (このIDを非表示/違反報告)
ともね(プロフ) - 無気力★乃愛さん» 全然良いと思いますよ〜! (2016年10月2日 8時) (レス) id: 42e2ce2cff (このIDを非表示/違反報告)
無気力★乃愛(プロフ) - ともねさん» !?見下さったんですか!?あああありがとうございます!!皆様が想像していた夢主と似ていなかったりしていたら申し訳ないです…! (2016年10月1日 12時) (レス) id: 3e4f1675af (このIDを非表示/違反報告)
ともね(プロフ) - Twitterの絵見ました!上手いですね〜〜! (2016年10月1日 12時) (レス) id: 42e2ce2cff (このIDを非表示/違反報告)
無気力★乃愛(プロフ) - 詠斗さん» 嬉しいコメントとてもありがとうございます!!頑張ります! (2016年9月21日 17時) (レス) id: 3e4f1675af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無気力★乃愛 | 作成日時:2016年4月6日 15時