傍観者27人目 ページ28
いきなりかかってきた綿貫の電話に出るかどうか迷う。
少し考えてから、雨宿り出来そうなところを探し、結局近くにあったコンビニの軒下で電話をとった。
首から掛けていたタオルで画面を拭いてから耳に当てた
『はーい。もしもーし。』
電話相手が分かれば気も緩み口調もいつも通りの、はず。
なのに、
「うわっなんでそんな不機嫌そうな声なんだよ。」
『…別に不機嫌じゃねぇーし。』
「不機嫌だろ。」
『違うわボケ。あー…で、何?綿貫からとかどしたの。』
綿貫の声と共に聞こえてくる環境音は少し慣れない。
違和感全開だ、気持ち悪い。
てか、なんなの。
不機嫌だわバーガ。なんで気付くのアホ。
誰だってこんな大雨の中、電話かかってきたら『こんな時になんだよっ』ってなるからね。
いや、私なってるから。
異性との電話はベッドの上でハートのクッションでも抱きしめながら、顔を赤くして話してるイメージなんだよ。
でも、今の私はどうだ。
ベッドどころか家の中にでもいるわけじゃないし、クッションのかわりに抱きしてるのは硬いスクールバック。
相手が綿貫だから、まぁいいけど、ね。うん。
そんな事を考えながら、腰を下ろししゃがみ込む。
携帯を耳に当てたまま顔を伏せた。
「あー…そのな…あれ、今お前…どこ居んの?」
『あ?どこって…』
一瞬、一瞬だけ迷って『家だけど?』と答えた。
勿論嘘である、さっきも言ったように家どころか建物の中にすらいない、
おまけに制服が雨で濡れてて重いし、寒い。
隠す理由なんて無い。
でもだからと言って正直に答えたら、綿貫の優しさで迎えにきたりするんだろう、そんな迷惑をかけてしまうような事、きっとお互い面倒だから…楽な方を選んだ。
「…なぁ、和泉。オレ嘘は嫌いなんだ。」
先ほどから聞いていた声が少し低くなってから、携帯から聞こえる声とそのまま直接聞こえてくる声が重なった。
『うん?』と驚きを隠せない間抜けな声がでる。
伏せていた顔を上げると、左右非対称なアシンメトリーのレタス。電話相手である綿貫桜哉が“しばらく”見ていなかった冷たい目でしゃがみ込む私をこちらをみおろしていた。
その目はあまりにも冷たく、思わずブルッと背筋が凍った。
「何嘘ついてんだよ、お前」
『あ、あはは、はは………ごめんなさい』
な
ん
で
い
ん
の
?
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まっちゃ* - とても面白い作品でついつい読みいってしまいます!後こゆきの漢字は虎に雪で虎雪ですよ! (2018年5月13日 22時) (レス) id: cd2ef48f8b (このIDを非表示/違反報告)
ともね(プロフ) - 無気力★乃愛さん» 全然良いと思いますよ〜! (2016年10月2日 8時) (レス) id: 42e2ce2cff (このIDを非表示/違反報告)
無気力★乃愛(プロフ) - ともねさん» !?見下さったんですか!?あああありがとうございます!!皆様が想像していた夢主と似ていなかったりしていたら申し訳ないです…! (2016年10月1日 12時) (レス) id: 3e4f1675af (このIDを非表示/違反報告)
ともね(プロフ) - Twitterの絵見ました!上手いですね〜〜! (2016年10月1日 12時) (レス) id: 42e2ce2cff (このIDを非表示/違反報告)
無気力★乃愛(プロフ) - 詠斗さん» 嬉しいコメントとてもありがとうございます!!頑張ります! (2016年9月21日 17時) (レス) id: 3e4f1675af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無気力★乃愛 | 作成日時:2016年4月6日 15時