104話 炎柱の決意 3 ページ8
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線香を上げた俺たちは書斎へと向かった。
父上は書机の上に何冊かの本を広げていた。
「二人ともこちらへ」
父上は静かな瞳で呼びかけ、その前に座った。
「煉獄家の者が伝説の稀血と出会った、これは最早宿命と言えよう。
A、君には言ったが煉獄家と伝説の稀血には深い因縁がある。
それを踏まえた上で、お前たちに見せたいものがある」
父はそう言うと一冊の古びた本を差し出した。
「……“十代目炎柱の書”?」
「煉獄家の中で唯一、鬼舞辻と遭遇した当主が書き残した150年前の書物だ。
これともう1冊、十二代目の書物も残してある」
「……なぜこの2つだけは残しておいたのですか?」
「不可解なゆえ残しておいたのだ。
十代目の当主は伝説の稀血を殺そうとしたことで鬼舞辻の怒りを買い絶命した。
しかし数十年後、彼女は自ら煉獄家に殺してくれと直談判しに来たのだ」
父は十二代目の炎柱の書を開き、ある部分をよみあげた。
「───彼女は言った。“わたしの命と引き換えに、いずれ生まれくる伝説の稀血にこれを託して”と───
それが少女鬼譚と呼ばれる書物だ。当時の炎柱はそれを産屋敷一族に託した」
『……彼女はいったい、どんな意図で鬼狩りに託したのでしょう……』
「彼女はほかにこんなことを言っていた。
もう許容できない。次に生まれてきた伝説の稀血にはこんなことしないでほしいと。
結局、彼女は鬼の最期のよう灰となり崩れ落ちて死んだそうだ」
俺はその言葉を聞いた瞬間に理解した。
そうか、父はそれを危惧していたのか。
「……Aも同じ道を辿ると?最期は灰のように崩れ、死んでしまうのではないかと?」
『そんな……あの、彼女が言っていた「こんなこと」ってなんなんですか?』
「許容しなければいいそうだ。しかし、その“許容”の意味が分からない。
それさえ分かれば最悪の事態を避けることができる」
Aを守ると決めた矢先に非情な事実を告げられるとは……。
そんな時、父が顔を上げ俺とAの目を見つめた。
「君は杏寿郎にとって特別な存在だ。
……元鬼殺隊としてこんなことを言ってはいけないが、それを踏まえた上で言わせてもらう」
瞳には強い光が宿っていた。
「生きてくれ、ふたりとも。
どうか生きて幸せになってほしい。
……俺からの言葉は以上だ」
その燃えるような瞳を見たのはいつぶりだろう。
久々の熱い視線に胸にぬくもりを感じ、俺はさらに強くなると心に決めた。
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まゆ(プロフ) - 続きが気になります!更新楽しみにしています! (2022年5月9日 22時) (レス) @page42 id: d503357f65 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴぽ - やば‥泣いた………… (2022年1月16日 15時) (レス) @page42 id: d39a98933d (このIDを非表示/違反報告)
*舞夜*(プロフ) - とても面白かったです!! 煉獄さんがいつ自分の気持ちに気づくかとても楽しみです!! 主人公も早く煉獄さんに落ちてほしい( ´罒`*) 更新頑張ってください!待ってます!! (2021年11月9日 1時) (レス) @page42 id: a1507cd74d (このIDを非表示/違反報告)
いぎ - めちゃくちゃ良かったです!続きが気になります!( °∀°) (2021年10月27日 16時) (レス) id: f55d613724 (このIDを非表示/違反報告)
#きのこ - ああああ尊いです 更新頑張ってください('ω')ノ 応援しています(^^♪ (2021年10月13日 15時) (レス) @page42 id: c964701d6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いお | 作成日時:2019年10月14日 15時