112話 遺言 2 ページ16
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手記の最後の空白のページを開いて思った。
あたしのことを考えてくれている人がいて幸せだ。
だから死なんて怖くない。
自分にそう言い聞かせたけれど、身体は心境に正直で。
『……っ』
あたしは声を押し殺して泣いた。
だめだ、早くに泣き止まなきゃ。
煉獄さんとお兄ちゃんを心配させちゃう。
そう思えば思うほど涙が止まらない。
やがてぱたり、と一滴の涙が真っ白な紙の上に落ちた。
しまった、これは大事な書物なのに……ん?
『なにこれ……』
涙が落ちて染みた部分に、文字が浮かび上がった。
……まさか。
『あたしの体液に反応してるの?』
あたしはわざと涙を流し、その紙に涙を擦り付けた。
結果、7行の文字列が現れた。
……どうしてここだけ隠していたの?
あたしはいても立ってもいられず、にちかちゃんを探した。
『にちかちゃん!あのね、最後の空白のページに文字が出てきたの、意訳してもらっていい!?』
「どういうこと?」
あたしは煉獄さんとお兄ちゃんを送り届けたにちかちゃんを探し出し、理由を説明して早速解読してもらった。
『どう?何が書いてあるの?』
「読みあげるわね。“血鬼術を受け入れないで、拒み続けて。それから、この言葉を伝えて”と書いてある」
『…………そうか、許容ってそのことだったんだ!
無意識に無効化する血鬼術を無理やり受け入れられるようにして、それで身体に異変が起こって……』
「私もそういうことだと思う。
炎柱様と炭治郎さんに早く伝えてあげないとね」
『うん!早速いってくる!』
「待って、まだ続きがあるわ」
「あ、そうだった」といって大人しくにちかちゃんの前に座った。
興奮冷めやらぬあたしは、読み上げた次の言葉を衝撃を受けた。
それはあたしにとっての鬼の概念というものを覆すものだった。
「彼女、どういった意図でこの言葉を隠したのかしら。
さほど重要なことではないように思えるけど」
鬼も元は人だ、だけど鬼に“そんな感情”なんて……。
でも分かった。だから鬼はあたしに執着するんだ。
『……あたし、その言葉を伝えようと思う』
「え?」
『少なからず、あたしが鬼狩りであり、稀血である以上いつか出会うはず。
あたしは真実を知りたい、だからその言葉を伝えるよ』
だけどそのためには強くならないと。
あたしは更に強くなると決め、立ち上がった。
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まゆ(プロフ) - 続きが気になります!更新楽しみにしています! (2022年5月9日 22時) (レス) @page42 id: d503357f65 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴぽ - やば‥泣いた………… (2022年1月16日 15時) (レス) @page42 id: d39a98933d (このIDを非表示/違反報告)
*舞夜*(プロフ) - とても面白かったです!! 煉獄さんがいつ自分の気持ちに気づくかとても楽しみです!! 主人公も早く煉獄さんに落ちてほしい( ´罒`*) 更新頑張ってください!待ってます!! (2021年11月9日 1時) (レス) @page42 id: a1507cd74d (このIDを非表示/違反報告)
いぎ - めちゃくちゃ良かったです!続きが気になります!( °∀°) (2021年10月27日 16時) (レス) id: f55d613724 (このIDを非表示/違反報告)
#きのこ - ああああ尊いです 更新頑張ってください('ω')ノ 応援しています(^^♪ (2021年10月13日 15時) (レス) @page42 id: c964701d6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いお | 作成日時:2019年10月14日 15時