115話 遊郭潜入 ページ19
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ときと屋に潜入してしばらくたった頃。
「A!あんたはときと屋の期待の新星だよ!
顔もいいし気立てもいい、あんたなら立派な花魁になれるよ!」
『ありがとうございます!』
「さあゆっくり休みな、菓子を持ってきてやるから待ってなさい」
『あ、はい』
……花魁になるつもりはないんだけどなあ。
舞を踊ったところ、女将さんに絶賛され褒めちぎられた。
嬉しいけど、嘘をついていることは少し心が痛い。
「A、ちょっと」
部屋でひとり女将さんを待っていると、屋根の上からお兄ちゃんに呼ばれた。
屋根の上に登ると伊之助がいた。
『伊之助!』
「よおA子、お前無事だったんだな。
やっぱりここには鬼がいやがる!お前を真っ先に狙うと思ったけど違ったんだな」
『ああ、私ね、これを持ってるから大丈夫なの』
そういって懐から匂い袋を出し、ひと粒藤の毒をとりだした。
「なんだこれ」
「……藤の花を凝縮して錠剤にしたものか?いや、それにしては匂いが……」
『これはね、しのぶさんがあたしのために作ってくれた藤のサヤと種子からできた強力な毒なの。
これを持ってたらあたしの匂いが薄まって鬼が感知しにくくなるんだって』
唖然と見つめる2人をよそに、あたしはそれをぱくりと飲み込んだ。
「何してるんだA!!!」
「おいバカ!吐き出せ!そいつは毒なんだろう!?」
慌ててあたしの肩を掴む伊之助にあたしは笑った。
『万が一鬼があたしを喰らった時、こうしておけばあたしの身体は鬼にとって劇薬になる。
それにあたしは普通の人間と身体の構造が違うから大丈夫。
……全てはここに巣食う鬼を倒すためだよ』
「……馬鹿野郎!!!」
ニヒルに笑うあたしを叱咤したのは、伊之助だった。
「なんでそんな無茶しやがる!
そんなことしてお前が腹でも壊したら、お前の兄貴の健太郎が悲しむだろうが!」
「……伊之助」
『え…待って健太郎って誰よ!お兄ちゃんも慣れちゃダメでしょ!』
「うるせえ聞け!紋逸だってきっと同じこと言うぞ、心配するぞ!」
伊之助は真剣そのものの瞳であたしを見つめている。
あたしはその翡翠色の瞳に負けた。
『……ごめん伊之助。ここに来てから妙な胸騒ぎがして、あたしももうちょっと慎重に行動するよ。
……ところで、善逸さんは?』
「善逸は来ない」
驚いて首を捻ると、宇髄さんがいつの間にかそこにいた。
……その覇気のない背中、まさか。
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まゆ(プロフ) - 続きが気になります!更新楽しみにしています! (2022年5月9日 22時) (レス) @page42 id: d503357f65 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴぽ - やば‥泣いた………… (2022年1月16日 15時) (レス) @page42 id: d39a98933d (このIDを非表示/違反報告)
*舞夜*(プロフ) - とても面白かったです!! 煉獄さんがいつ自分の気持ちに気づくかとても楽しみです!! 主人公も早く煉獄さんに落ちてほしい( ´罒`*) 更新頑張ってください!待ってます!! (2021年11月9日 1時) (レス) @page42 id: a1507cd74d (このIDを非表示/違反報告)
いぎ - めちゃくちゃ良かったです!続きが気になります!( °∀°) (2021年10月27日 16時) (レス) id: f55d613724 (このIDを非表示/違反報告)
#きのこ - ああああ尊いです 更新頑張ってください('ω')ノ 応援しています(^^♪ (2021年10月13日 15時) (レス) @page42 id: c964701d6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いお | 作成日時:2019年10月14日 15時