94話 煉獄家 4 ページ47
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千寿郎くんが持ってきてくれた炎柱の書はズタズタに引き裂かれていた。
お兄ちゃんはもっと鍛錬して強くなると誓い、千寿郎くんは歴代炎柱の書を修復してくれると約束してくれた。
あたしはどうしても気になることがあったのでお兄ちゃんと一緒に帰らず、屋敷の裏庭から回って煉獄さんの父親を探すことに。
新しい酒瓶を持って縁側に座っていた彼は、何やら大声を上げると、そのあと声を抑えて泣いていた。
驚いた、彼が煉獄さんを想って泣いていたからだ。
『あ、あの……』
あたしが声をかけると煉獄さんのお父さんは慌てて袖で涙を拭った。
「なんだ、まだいたのか。さっさとこの場から───」
『瑠火さんって、あなたの奥様ですか?
切れ長の目の、髪の長い綺麗な女性ですよね?
澄ました顔をされてるけど、笑うと優しいあたたかい表情で……』
「!!?なぜそれを……」
非常に驚いた様子の彼を見つめ、あたしは話を続けた。
『あの、信じられないかもしれませんが、鬼に左腕を引きちぎられ、失血で気を失ったあと、真っ暗な暗闇の中、あたしを明るい方へ導いてくれたのが彼女でした。
杏寿郎を頼みますと言われたんです。
ですからあたしは、あなたになんと言われようとも煉獄さんの傍にいます。
あたしは煉獄さんの自慢の継子ですから!』
最後に笑顔で強がってみせると、彼は肩を落とした。
「そうか……」
うつむいたその表情は今にも泣き出しそうな優しい顔だった。
「君は瑠火によく似ている。
その儚げな美しい瞳の中に、ぶれない芯と強い意志がある。
……酷いことを言ってすまなかった。
単刀直入にいうと伝説の稀血と煉獄家には因縁がある。
煉獄家の跡継ぎには代々、伝説の稀血を許すなと教育されている。
……このことは杏寿郎は知らないから安心してくれ」
彼は顔を上げ、しっかりと目を合わせた。
その凛々しい目元は煉獄さんに瓜二つだった。
「杏寿郎の目が覚めたら我が家にもう一度来て欲しい。
杏寿郎と君に見せたいものがある」
『はい、煉獄さんが目を覚ましたら文を送ります。
経過は良好だと聞いたので2,3日したら目を覚ますかもしれないです。
それでは、失礼致します』
「……ああ、杏寿郎をよろしく頼む」
『はい!」
よかった、煉獄さんはやっぱり家族に愛されているんだ。
それを知っただけでも心が救われる。
あたしは清々しい気持ちでお兄ちゃんを追いかけた。
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林 - いえいえ、先走っていたのですみませんっ!!(スライドイング土下座!) (2019年10月14日 16時) (レス) id: 15da3cb52a (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - 林さん» すみません製作途中だったので限定公開にしてました!解除したのでぜひ見に来てくださいd('∀'*) (2019年10月14日 16時) (レス) id: 992332b5ce (このIDを非表示/違反報告)
林 - ログインユーザーじゃないから次回作読めないですわ……でも読めなくても応援してます!(そもそもメアドとかがありませんしね、私 (2019年10月14日 16時) (レス) id: 15da3cb52a (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - リザさん» コメントとお心遣いありがとうございます(*゚∀゚*)毎日更新で頑張ります! (2019年10月13日 10時) (レス) id: 592ede7792 (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - mayumiさん» 返信遅れてすみません!その件に関しては今後解説していこうと思ってます!! (2019年10月13日 10時) (レス) id: 592ede7792 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いお | 作成日時:2019年9月13日 21時