伝説の稀血 弐【鬼滅の刃】

74話 音柱のみぞ知る ページ27

side 天元



月が神々しく光る闇夜が空一面に広がるころ、柱合会議が終わった。

帰り際任務のない俺は飲みにでも行くかと煉獄に声をかけようとした。



「れんご……」

『煉獄さん！』



しかし煉獄の前に飛び出していったのは竈門A。

……にしてもあいつ、半年前はちんちくりんだったのにやけに成長早ェな。

背が伸びたばかりか大人びた見た目に、3人の嫁がいる目の肥えた俺でも驚いた。



「A……」

『煉獄さん、あたしはあなたに嘘をついていました。
鬼をかばうなんて、あなたの継子として有るまじき行為です。
申し訳ありませんでした！』



頭を下げ煉獄に謝るAの手は小刻みに震えている。

俺は気配を消し様子を見守ることにした。



『今回の件についてお許しをいただけるなら、どうかあなたの傍にいさせていただけないでしょうか』



頭を下げたままのAの目元から何かが落ちる。

それは月の光に反射して光った───涙だ。

煉獄はそれに気がついていた。



「A、顔を上げるんだ！」

『……』

「A」



Aはぐっと口を噛み締め涙を拭い、顔を上げ煉獄を見つめていた。

感情を噛み殺した表情はとても13の娘ができるものじゃねえ。

忍として生きていた自身と重ね俺は顔を歪めた。



「目が腫れる、そんなにこするな」

『泣いたら鬼を呼んでしまいます。
それに泣くのはずるいことです。あたしは、泣いて許してもらおうとしてるなんて思われたくない』

「そんなこと誰も思ってない。俺はAが人一倍努力家で、どんな痛みにも耐えていることを知っている」

『あたしは特異的な稀血です。体力は人よりあるし、怪我だって早く治ります』

「違う、俺が言っているのは“心の痛み”だ」



Aは目を見開き驚きを前面に出した。

自分が我慢していることに気がついていなかったようだ。

そうだろう、自分じゃ分からねえもんだ。

俺もお館様と出会うまではそれに気がつかなかった。



「昨夜も言ったが、せめて俺の前では隠そうとしないでくれ。
全部受け止めるから、AはAのままでいいんだ」

『煉獄さん……』

「ともかく明日は家族に会いに行ってくるんだ。
どちらにしろ次は長期任務になるだろう、たまには休暇も必要だ。
それから、今後は変わらず俺についてきてくれ！分かったな!!」

『はい!!』



はあ、流石の俺でもこの雰囲気を邪魔するわけにはいかねえな。

仕方ねえ、今日は大人しく帰って嫁に会いに行くか。

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