70話 炭治郎と禰豆子 3 ページ23
side 杏寿郎
お館様が現れるとAは俺の隣に大人しく腰をおろした。
俺は動揺を隠せなかった。
「お館様におかれましても御壮健でなによりです。
益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」
不死川がお館様に挨拶し、竈門炭治郎に対して説明を求め、柱たちが意見を述べている際でもそれは変わらなかった。
心から信頼をおける継子が鬼の存在を隠していたのだ。
それにあの少年、Aと同じ髪色と瞳、そして竈門という名字からしてよもや兄だとは思っていたが……。
てっきりAは、兄が鬼を連れていることなど知らないと思っていた。
それゆえに衝撃が計り知れなかった。
「────わかってくれるかな?」
「わかりませんお館様。人間なら生かしておいてもいいが鬼は駄目です。
承知できない」
お館様が了承を求め、ほかの柱が黙っても、許可することができない不死川は己の腕を傷つけ、鬼の入った箱に自ら血を垂らした。
『お姉ちゃん……!』
Aは鬼である姉を助けようと腰を上げる。
「A、だめだよ」
が、Aが動くよりも早く、彼女の服を掴みそれを阻止したのはAの隣に腰を下ろしていた時透だった。
「君は兄ほど馬鹿じゃない。
こういう時どうすればいいか分かってるよね?」
『……』
時透の問いかけにAはその大きな瞳を揺らし、結局その場に力なく腰をおろした。
姉が不死川に3度刺され、兄が伊黒に拘束されている様を見てもAは声もあげず、必死に唇を噛み耐えていた。
……それほどまでに、兄姉を思う気持ちが強いのか。
俺は驚いた。
やがてAは唇を噛み切ってしまい、ポタリと地面に一滴の血が落ちた。
「!?」
その血の匂いに不死川の前に立っていた鬼の娘が振り返った。
「(しまった……!Aの血は俺より濃い。どうにかこちらに注目を……)
おい鬼、どこ見てやがる!」
不死川が血が流れ出る腕を近づける。
しかし禰豆子と呼ばれた鬼はぷいっとそっぽを向き、Aに注目した。
俺は驚いた。
Aを凝視する鬼の顔が、妹の血の匂いに気づき、怪我を心配する「姉の顔」だったからだ。
「禰豆子!」
『……お姉ちゃん!!』
兄が拘束を抜け出したと同時に、Aは我慢しきれず、自ら姉の目の前まで飛び出した。
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林 - いえいえ、先走っていたのですみませんっ!!(スライドイング土下座!) (2019年10月14日 16時) (レス) id: 15da3cb52a (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - 林さん» すみません製作途中だったので限定公開にしてました!解除したのでぜひ見に来てくださいd('∀'*) (2019年10月14日 16時) (レス) id: 992332b5ce (このIDを非表示/違反報告)
林 - ログインユーザーじゃないから次回作読めないですわ……でも読めなくても応援してます!(そもそもメアドとかがありませんしね、私 (2019年10月14日 16時) (レス) id: 15da3cb52a (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - リザさん» コメントとお心遣いありがとうございます(*゚∀゚*)毎日更新で頑張ります! (2019年10月13日 10時) (レス) id: 592ede7792 (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - mayumiさん» 返信遅れてすみません!その件に関しては今後解説していこうと思ってます!! (2019年10月13日 10時) (レス) id: 592ede7792 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いお | 作成日時:2019年9月13日 21時