かるた部、創ろっさ �� ページ2
4月、まだ桜があまり咲いていない頃。
職員室にとても珍しい人物がいた。
「菅野先生、お願いします。」
「ダメや綿谷。創部するときに5名揃っていないとダメなんや。」
「そこをなんとか！あと一名集めるんで。」
綿谷新が、部活動担当教諭の菅野先生に創部届をつっかえされるのはこれで、4回目だ。
「そういや綿谷。かるた部創るんやったら、大事な奴、忘れてえんか？」
「・・・・・・・・・・・あ。」
新は、1年生の教室をシラミ潰しに当たっていくと、ある男子生徒が教えてくれた。
ある人は、屋上にいる、と。
ガチャ
新が屋上に続く扉を開けると、そこにいたのは、墨の入ったタッパーを持って筆で文字を書いている
女子生徒が2人。ハーフアップのほうの女子生徒に、新は声をかけた。
「この春から高校生やったもんな、伊織。」
「今は邪魔せんといて、お兄。」
我妻伊織、準クイーン。新の所属しているかるた会・福井南雲会の後輩である。
書道が得意で、中学生の頃はよく表彰されていた。
ちなみに、お兄とは新のあだ名だ。
伊織の横にあるものに、新は目を止める。
「これ、光琳かるた？」
江戸時代に活躍した画家の尾形光琳が描いたかるただ。今まで幻のかるたと言われていたかるただっ
たが、少し前に見つかり複製されて、８〜14万円で売っているかるただ。
「お兄、それが何や。」
「お願いがあるんや。かるた部に入ってくれんやろか？」
「ええよ。でも、条件があるんや。」
「何や？」
「お兄、私と付き合ってや。」
「好きな子おる。」
「瞬殺やの。入るわ、かるた部。入るよな、神代も。」
新は、伊織の横で絵を描いている少女を見る。
「ってあれ⁉藤宮さん⁉」
「綿谷さん？なんで？」
「お兄と神代、面識あるん？」
「伊織ちゃん。私と綿谷さん、同じクラスなんだ。」
「そうやったん。で、かるた部、入る？」
「美術部員だから・・・・・。」
「ええやん、ええやん。な？」
「ええと、新田先生に許可もらったらな。」
新田先生とは、美術部顧問の先生だ。人数の少ない美術部を懸命に守っているため、神代がぬけるの
は、とても大変なのだ。
｢ほいじゃ、ここに名前書いてほしいんやけど･････。｣
伊織は筆を置くと、新の出した創部届に、
1430 我妻 伊織
と書いた。神代は、創部届の人数欄を見る。
3630 綿谷新 2526 牧野翼 2527 松林舜 2629 松林滉 1430 我妻伊織
「藤宮さん。明日の昼休みまでに返事下さい。」
「わかりました。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：山野 紗世 | 作成日時：2021年12月11日 20時
