グリム童話〈ars〉 (ページ8)

今日:8 hit、昨日:8 hit、合計:51,521 hit

6 ページ8

.

朝になると、おばあさんは和也を大きな鳥かごに放り込んで戸に鍵をかけてしまいました。

それから、Aをたたきおこして、

「いつまで寝ているんだい！さっさと水をくんで、うまいご馳走をこしらえるんだよ！
お前の兄さんに食べさせて、太らせるんだからね。こんなに痩せてちゃまずくて食えないよ」

と、どなりつけました。
かわいそうにAは、お兄さんを太らせる料理を作らなければならないのです。

しばらくたったある日、おばあさんは和也を入れた鳥かごにやってきて言いました。

「どうだい和也、少しは太ったかい？さあ、指を出してごらん」

おばあさんは目が悪いので、あまりよく見えなかったのです。
そこで頭の良い和也は指の代わりに、スープのだしがらの鳥の骨を出しました。

おばあさんはその骨を指だと思って、

「やれやれ、まだそれっぽっちか。これじゃあ、もっともっと料理を奮発しなくちゃね」

と、言いました。
しかしいくら料理を奮発しても、ちっとも効き目がありません。
おばあさんは、とうとう待ちきれなくなりました。

「ああ、もうがまんが出来ないよ。痩せっぽっちのガリガリだろうとかまうもんか。今すぐ大鍋にぶちこんで食ってやるよ。
さあA、急いで大鍋に水を入れな。水を入れたら火をたくんだよ」

悲しい事に、Aはお兄さんを料理するために火をたかなければなりません。

Aは、しくしくと泣き出しました。

「A！なにをぐずぐずしてるんだね。さっさと火をたきな！」

.