櫻色のカンヴァス（赤×紫） (ページ2)

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第１話ページ2

おどおどしていたが、なんとか言い切ることができた。

しかし、顧問の質問が絶えなかった。

「美術は好きなの？」「絵を描くのが好きなの？」「デッサンは描いたことある？」など…。

もちろんデッサンはさっき描いたのが初めてだし、美術なんてそこまで好きではなかった。

全ての質問の答えが曖昧になったが、顧問は満足そうな顔で椅子に座った。

それからは、他のメンバーの紹介だった。

「一年六組の前原菫です。一年生のまとめ役をしています。これからよろしくね」

これは先程の前原チャンである。

とてもしっかりした紹介だった。

僕と比べると、その差はすごいものだ。

「えとー、一年六組の、迫田チアですー。あ、さっきの菫と同じクラスねー。絵を描くのはまぁ好きです～。特にアニメ絵がね。これからよろしくね！」

これは迫田チャンである。

少し語尾が怪しいものの、こちらもしっかりとしている。

それから全員の紹介がおわり…

「さてと、最後は先生だね。顧問の中平と言います。これからよろしく」

一番ストレートである。

それでいいなら僕もそう紹介すれば良かった、と後から後悔することになった。

それから、後は掃除。

なんでも、一年生は掃除に絶対参加しないといけないらしい。それがルールである。

僕は軽く箒がけをし、すぐに掃除棚にしまった。

それから終わりの挨拶、帰りの挨拶で終わり。

もう時計は６時半を回っていた。

こんなに時間がたつのは早いものだろうか。

さっと美術室から出て、靴を履き正門を出る。

美術室から正門は近いので、すぐに出ることができる。

それからしばらく歩いてからだった。

「櫻井くん！」

後ろから声がする。誰だ、一体？

見ると、見知らぬ顔があった。

いや、一度は見たかもしれない。

美術部員の紹介のときに、顔を見たはずだ。

「松本くん…？」

確か、彼は松本潤と名乗っていた。

顔立ちが整っていて、美術部男子の中では珍しい方だったからよく覚えている。

「おーい、チアー！早く来いよー」

松本くんはそのまま迫田チャンを呼び、立ち止まった。

僕も立ち止まる。

しばらくしてから真っ赤な顔をした迫田チャンが走ってきた。

かなり疲れたようだ。息も上がっている。

「私、潤ちゃんみたいに足早くないからさ…。どっちかというと、遅い方だし」

「俺は去年陸上の大会とか出たことあるしな、お前とは格が違うんだよ」

松本くんはそう言って笑った。