十人十色 (ページ6)

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「お兄ちゃん!!ママが・・・!!」
「大丈夫、大丈夫だから、落ち着け!」

焦るのを必死に我慢する。
冷静にと心を落ち着ける。
弟たちが不安なのに、俺まで取り乱すことなんて出来ない。

「慧兄ぃ、救急車来た!」
「お前ら、ここで待っとけ!」

圭人の声を合図に外に出る。

簡単に、今の母さんの状況を救急隊員に告げると、
母さんを乗せた救急車は病院に向かった。

「ママは!?大丈夫なの!?」
「とりあえず、病院に行った。
ママはパパに任せよう。俺らは荷物持って後から行くぞ。
でも、心配するな。大丈夫だから。」

と弟の頭を撫でながら言うと、
龍太郎や涼介、裕翔や大貴、圭人などは、
ほっと安心したかのように笑顔を見せる。
ただ一人、侑李だけが掌をギュッと握りしめ、うつむいている。

「侑李。」

と呼びかけても、何も話さない。
どうすればいいのかと思案していたら、
ガチャと扉が開いて雄也が帰ってきた。

その瞬間、目の前にいた侑李がいなくなったと思うと
侑李が雄也に掴みかかっていた。
雄也が

「何、すんだよ」

と離そうとしても侑李は離さない。
ずっと雄也を睨んだまま唇を噛みしめている。

「...何も知らないくせに!!」

侑李がいきなりどなりだす。

「ママが倒れたの兄ちゃんのせいなんだからね!!」
「は？どういうこと？」

侑李の声で訝しげに慧を見やる。

「...倒れた。今、病院。俺らも今から行く。」

と慧が告げると

「そっか。」

と言い、上に上がろうとする。

「そっかだけなの？ママが倒れても何とも思わないよ？
おかしいよ!!お兄ちゃんの馬鹿!!
どれだけ・・・どれだけママが悲しんでると思ってんの？
ママがどれだけ雄兄ぃのこと心配してると思ってんの？
何も知らないくせに!見ないふりしてるくせに!
ママが何も言わないのに甘えてるんでしょ!」

一気に侑李は話し出す。
その声は悲痛の叫びに近かった。
侑李の目から涙がぽろぽろと零れ落ちる。

侑李がここまで怒りや悲しみを表すのは珍しい。
家族の中で一番のお母さんっ子は侑李だった。
ママは子どものこと皆大好きだし、
子どももママが大好きだった。
でも、その中でも侑李のママ好きはずば抜けていた。