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***
｢取り敢えず、一旦中に入りましょう。｣
本郷さんに促され、校舎に戻ったものの何もする気になれないのか、皆椅子に顔を項垂れて座り込んでいた。
その様子を後目に私は静かに職員室を出る。
私が向かった先はかつて過ごした教室だった。
静まり返った廊下を歩いて、3年B組と書かれた教室に足を踏み入れる。
机と椅子はバリケードとして使うつもりだったのか高く積み上げられ、あちこちに貼られたポスターは無残にも破られ、床に散らばり、私達が来る前までの悲惨さを物語っていた。
『………………』
窓にゆっくり近づいて、カーテンを避けて窓を少し開ける。
隙間から柔らかい風が入り込んでカーテンをひらひらと揺らした。
夜の時間が終わり、朝日が遠くのほうでゆっくりと上り始める。
太陽の眩しさに思わず目を細める。
すると急に後ろのほうで扉が開かれた音がした。
驚いて振り向くとそこにいたのは等々力くんだった。
『等々力くん、』
｢………………ここにいたのか。｣
等々力くんはゆっくり窓の方へ歩いてくる。私の左隣に立つと窓を開けた。
風がまたふわりと吹いてカーテンを揺らす。
オレンジの暖かい日の光が私達を優しく包む。
風が、朝が来る匂いをつれてきて。
だめだ、と思った時には既に遅く。
我慢していたはずの涙がぽたぽたと溢れ落ちた。
『………………っ』
朝が来た。
それまでの日常だったら、何てことはない何時もの朝のはずだった。
｢…………………｣
横で等々力くんが動いた気配がした。
そう思ったすぐあとに、何か黒いもので頭の上から被せられる。
それが等々力くんの黒いパーカーだと気付いた時、
私の体ごと左に引き寄せられた。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
ぎゅっと、誰かが私を抱き締める。
驚きのあまり涙が止まる。
それが等々力くんだと気付くのは、抱き締められてから10秒経ってからだった。
｢大丈夫。｣
等々力くんの優しい声が上から聞こえる。
刹那、私の涙が再びぼろぼろと流れ出した。
涙で視界が滲む。
『………等々力くん、』
｢ああ。｣
『……わたし達、いきてる』
｢………ああ。｣
生きている。
私達は、生きている。
等々力くんはぽつり、ぽつりと呟く私に
相槌を打つ。
私は、等々力くんの着ている白いTシャツをきゅっと握り返した。
日の光が高くなり始める。
それは、生きているという証である朝の訪れだった。
episode,1 fin.
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m(プロフ) - さらさん» はじめまして、コメントありがとうございます！嬉しいと言って頂けて何よりです！ミンジュンくんもかっこいいですよね！是非更新しましたらまた読んで頂けると嬉しいです！ (2021年2月10日 8時) (
レス) id: c324cc81b5 (このIDを非表示/違反報告)
さら - はじめまして！！等々力さんも大好きなので、お話書いてくれて嬉しいです！！一番はミンジュンくんです！！続き楽しみにしてます！！コロナで大変ですがお体には気を付けてくださいね！！ (2021年2月9日 23時) (レス) id: 8178d9f7d8 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - 化狐さん» コメントありがとうございます......！等々力さんのお話少ないですもんね。是非また更新しましたら読んで頂けると嬉しいです！ (2021年2月9日 21時) (レス) id: c324cc81b5 (このIDを非表示/違反報告)
化狐(プロフ) - 等々力さんの小説を待ってました………っ！！更新待ってます！！！ありがとうございます…！ (2021年2月9日 20時) (レス) id: 8707569254 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - にゅーとさん» コメントありがとうございます！嬉しいと言って頂けて何よりです。更新頑張りますので、また是非読んで頂けると嬉しいです！ (2021年2月9日 16時) (レス) id: c324cc81b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：m | 作成日時：2021年2月9日 10時
