盲目の姫君【青】 (ページ6)

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「ごめん遅なった、」

特に何もすることもなく
ぼーっとしていると

藤井くんが戻って来た

二つのコップに注がれたお茶と氷が、どこか夏らしさを感じさせた。

「こちらこそ、おかまいなく...」

「俺がむりやり連れて来たから気にせんといて」

あ、むりやりってことは分かってるんだ..

ますます藤井くんがどんな人なのか謎になっていく。

初対面に等しい私たちが話すことなんて特になく、時計の針が進む音が響く。この上なく、気まずい。

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「いつになったら、名前で呼んでくれるん？」

そんな無言の空気を壊したのは、藤井くんだった

じっとわたしの目を見つめてくる。

「なんで、」

「藤井くんってよそよそしいやん？」

「じゃあ流星くん？」

「ああ、案外さらっと言えるタイプなんや」

流星くんが何を言ってるのか分からず、わたしは「？」となっていたけど

流星くんはただ「ふは、」と微笑むだけだった。

だから、ああ、その笑顔に弱いんですわたし。

「A、もっかい呼んで」

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ずい、と鼻と鼻が近付きそうな距離になって
わたしはいつの間にか流星くんが「ちゃん」を付けなくなったことなんて、頭になかった。

「...りゅう、せい」

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わたしがそう言えば

また流星くんはふふ、と笑って

「ほんま、かわええやつ」

息をするように、わたしにキスをした。