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展望台への階段を登り切り、一度深呼吸をする。扉を開けると展望台と謳ってるだけあり、綺麗な夜空が見えた。
『……来ちゃったけど、もしかして騙されてるとかないよね…?例えば上から馬鹿にしたような内容のキッドカードが降ってくると…か…』
「そんなことはしませんよ」
私の頭より少し上から降ってきたのは紙ではなく声。キッド本人であった。
「まさか本当に来てくれるなんて」
『呼んだのは貴方でしょ?』
「えぇ」
くるりと振り向くと、人の気配なんて何一つ感じなかったのに、そこには彼が立っていた。
喉まで出かかった“気持ち”を押し殺し、動じていない“フリ”をする。
距離は___そう、100センチほど
手を伸ばせば届く距離。
『私を呼び出してどういうつもり?どうしてこんなところに』
認めたくない。信じたくない。でも、気持ちと違って身体は正直。今でも相手に伝わってしまうんじゃないか、聞こえてしまうんじゃないかというくらいの心臓の音がドクン、ドクンと身体を震わす。
あぁ、なんでこんな得体の知れない人に奪われてしまったのだろう。ここにくるまでも意識しないように、考えないようにしていたが、まるで一人の恋する女の子のように、好きな人に会いに行く胸の高鳴りを隠していた。
そんな誰にも気づかれないよう上手く堰き止めていた感情が、彼に会うとその手でいとも簡単に流れ出しそうになってしまう。
“すき”
どんな理由であれ、経緯であれ、彼に会えた瞬間、反射的にそんな言葉が体中に反響して喉までその言葉が出かかった。
どうして彼なのか
どうして好きなのか
何度考えても答えなんて見つからない。きっとそういうものなのだろう。
_____恋というものに、理屈なんてものはない。
「言ったでしょう?あなたの心を奪う、と」
そう言った彼は半歩私に近づく。
あと50センチ。
『…言ってたけど。それよりどうして私を踊り場まで?どうせ運ぶならここまで運んでよね』
先程からずうっと言いたかったことを吐き出す。
「あぁ、それは簡単。予告時間前にお渡ししカード。あそこには何と書かれていました?」
『確か…………展望台にてお待ちして…あ。』
「ふふ、そう。待っている。待っていると言っておきながら連れてくるだなんて、そんなせっかちではありませんよ」
『もう、なにそれ』
くだらない理由。そう思いながらも、そんな小さな理由に笑みが溢れてしまう。
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華月(プロフ) - milk tiramisuさん» ありがとうございます!!とっても励みになります;; (2019年5月6日 21時) (レス) id: 4a5a738660 (このIDを非表示/違反報告)
milk tiramisu - すごく好きです!このお話! (2019年5月6日 18時) (レス) id: d5e35b6f92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華月 | 作成日時:2019年5月3日 0時