検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:997 hit

春の3日目 ページ5

1限目は学活で、転校生の彼女に学校を案内してあげよう、というものだった。

僕は未だ先程のショックが抜けておらず、茫然自失と黒板を眺めている。先生が白墨を手に《自習》と書くと、生徒達は騒げると思ったらしく、小さくガッツポーズを取った。

学校を案内する筈なのに自習とは、と思ったがどうやら違うらしい。大人数で行っても目立つし他のクラスは授業中だ。三人一組で、が先生の言い分だった。

手を差し込んでいた本を開いて、文字列を追う。

僕の席は丁度、一番後列の窓際だった。

先生が教卓に座って読書を始める。

Aの元へ沢山の視線が集まった。彼女は誰と行くのか。皆の興味は専らそれと、僕だ。Aと親しげに話していた僕が選出されるのか否か、骨董商のように値踏みしている。

「八雲君っ」

彼女が動いた。
嗚呼、全く、僕の描いた通りに物事が進んでいく。恨むぞ、運命。

「一緒に学校回ってくれない?」
「なんで僕なの」と僕は無愛想に零した。
「面白そうだからだよ!」

眩しいくらいの笑顔で云う彼女は、僕の手を取った。モテるんだろうな、とぼんやり思う。

三人一組じゃ一人足りないねー、なんて云うAに僕は提案した。

「一人、僕の知り合いを連れて行ってもいいかな」
「勿論!」

僕は本を机の中に仕舞い、迷わず彼の元へ向かった。お人好しな彼の元へ。

彼の名前を呼ぶと、真面目に勉強していたらしく手を止めて、僕たちを見る。

「一緒に行ってくれない? 敦」
「あ……うん、いいよ!」

こいつも眩しいくらいの笑顔を浮かべる。
僕は人間というものが嫌いなので、判らない。

どうしたらそんなに上手く笑えるだろうか。

そして、僕たちは教室を出た。

「此処が僕たちの教室で、此処は北舎の三階。他のクラスは四階にあるよ。二年三年生の教室は南舎の三階から五階までで」

敦が懇切丁寧に説明を行っている中、僕は、教室を出た途端聴こえる声たちにうんざりしていた。
怪異たちは僕が教室を出れば話し掛けていいと思っている。

「……八雲君?」

Aが僕の顔を覗き込んだ。
反射的に顔を逸らす。

歩を進め階段を降り乍ら、僕は苦し紛れに説明した。

「図書室が北舎の二階。保健室は昇降口の直ぐ横。職員室が南舎二階で音楽室は北舎四階」

Aはうんうん、とか判った、とか相槌を打ってくれて喋り易い。

僕と敦がぺらぺらと交互に説明を終えた処で、丁度よく鐘が鳴った。


一限目は合同体育だ。

春の4日目→←春の2日目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:文スト , 学スト   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:顎&ゴリラ x他1人 | 作成日時:2017年4月13日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。