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藍沢「現場に行かなかった奴がでかい口叩くな!」
日頃のポーカーフェイスを捨てた藍沢の剣幕に、その場にいた全員が思わず固まってしまう。
藍沢の顔を3人が恐る恐る見上げたとき、そこにはいつもの無表情があるだけだった。
一転して冷静な口調となった藍沢が、言葉を続ける。
藍沢「引き受けた患者の治療は最後までやり遂げるのが医者の責務だ。その重さがわかるか?」
藤川「だ、だから!緋山はそれができなかったんだろ!」
しどろもどろになりながら藤川が反論したとき、藍沢は空になった紙コップをゴミ箱に投げ入れた。
藍沢「俺も、できなかった。だから…西口八重はまだ眠ってる」
そう言うと藍沢は、その場を後にした。
A「藍沢…。」
同じ頃、医局には三井と緋山がいた。
デスクのパソコンを操作しながら背後の緋山に語りかける三井。
三井「母子ともに状態は安定、自転車の子供も血腫除去のオペをして、今は落ち着いているそうよ」
緋山はただうなだれるのみ。
振り返った三井がさらに続けた。
三井「重症外傷の場合、最初の10分の処置が予後を大きく左右する。現場でのミスや迷いが患者の未来を変えてしまうの」
うなだれる緋山に、三井の言葉が剣山のように突き刺さった。
三井「できないことはできないと言う。自分の限界を知ることが、腕を磨くことよりも、ずっと大切なことなのよ」
三井が再びパソコンに視線を戻すと、一礼して緋山は部屋を出ていった。
ロッカー室____
白石「青木先生、今日はありがとう。私1人じゃ解決できなかったかも。」
A「ううん。私の方こそ患者さんに怒鳴ったりするなんて…やっちゃった」
お互い苦笑いしていると、緋山がそこへ入ってきた。
「お疲れ」と声をかける白石とA。
気を使っているのか、それきり緋山の方を見ようとしない2人。
やや焦れたように、緋山が開き直って声を発した。
緋山「悪いけどさ、私、全然へこんでないし、反省もしてないから。今回は運が悪かったの。だって、現場にもう1人…なんて予想もしないでしょ?そう、次だ、次!もうこれで要領はわかったし!」
白石「…よかった。思ったより元気で」
その声にあったのは嫌味でも皮肉でもない。純粋な優しさだった。
だからこそ緋山には堪えた。堪えたが…嬉しかった。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2019年9月9日 0時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
ゆっこ(プロフ) - asamilkさん» ありがとうございます(//∇//)読者の方のイメージから脱線しないよう頑張ります!笑 (2017年10月22日 23時) (レス) id: dd000cbb66 (このIDを非表示/違反報告)
asamilk(プロフ) - ゆっこさんの書くヒロインちゃんが好きです。更新楽しみにしてます^ ^がんばってください! (2017年10月22日 22時) (レス) id: dc820a982e (このIDを非表示/違反報告)
ゆっこ(プロフ) - 夕衣さん» あ、ほんとですね!大事なところ、丁寧に教えていただいてありがとうございますm(_ _)m訂正してきます! (2017年9月25日 21時) (レス) id: dd000cbb66 (このIDを非表示/違反報告)
夕衣(プロフ) - 「○○サイド」のサイドのスペル「side」です。「said」じゃありません。 (2017年9月25日 21時) (レス) id: 6ad02585f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆっこ | 作成日時:2017年9月24日 19時