片思い9 ページ10
それから三日程経過しただろうか。
メガネのレンズが光を反射して、
目がまったく見えないつんつん頭の男子が、
私に肩をちゃんちょんとつつく。
昼休みに、廊下でぼーっと突っ立ている時である。
似たようなシチュエーションでも手塚くんとは全然違うなぁ……。
なんて考えていたら、
低い声で待ちに待っていた言葉を伝えられた。
「南A、三年六組。帰宅部、図書委員所属。
……見学希望者だな? 今日の放課後、テニスコート前に来るように」
「は、はい!」
「……あぁ、俺はテニス部員の乾貞治だ」
そう言われて納得する。
……実は、名前までは知らなかったけど、彼も図書室の
お得意さんなのでよく覚えていた。
貸し出しに先生の了承がいるような小難しい本を
よく借りているので印象に残っているのだ。
手塚くんとは違った、人を寄せ付けない不思議な雰囲気を醸し出している。
って、さっきから手塚くんと比較ばかりしているなぁ……。
どれだけぞっこんなんだ、私は。
目の前の乾くんが聞き取れない程度のボリュームで
ため息をつき、わざわざありがとう、と返事をした。
静かに頷き背中を向ける彼を見つめながら、改めてガッツポーズ。
「(やったあああ! 葵ちゃん、やったよ!
二人で頑張ろう!)」
その場にいない葵ちゃんにこの喜びようを叫びたい思いだ。
どんな反応をするか楽しく予想する。
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