片想い7 ページ8
葵ちゃんが情報通なだけでなく、駆け引き上手なのも知っていた。
故に「任せて!」の一言に並大抵じゃない
安心感が発生したのだけど……。
いや、何故こうなるの?
「て、てて手塚くん」
「……なんだ?」
「あぁ、えっとね。部活のことなんだけど」
場所は体育館の裏。そして口ごもる私。
こんなシチュエーション、はたから見たら告白でしかない。
“私達”に私も含まれていることは大体予測できた。
というか私のための見学要請なのだから、
そこまで人任せにしようとするほど図々しくはない、はず。
でも、今手塚くんと一対一で話している状況は妙に緊張する。
てっきり葵ちゃん同伴で部活の見学について尋ねてくれると
なかり思っていたから……。
さ、行っておいで! と文字通り背中を押された感覚がまだ残っている。
ついでに、傍観者となる葵ちゃんの姿も、茂みの中に確認できた。
手塚くんが背を向けている側に上手く隠れているから、
幸いにも気づかれていないようだ。
でも、趣味悪いよ、葵ちゃん……。
「部活? 部活がどうかしたのか?」
「う、うん。見学を、させてほしいなぁって」
顔が見れない。
私の気持ちにあるしたたかな思惑がバレていないか、
ずっとヒヤヒヤしている。
何かしていないと落ち着かなくて。
手を後ろに組んで手遊びしながら、手塚くんのこたえを待つ。
「……別に構わんが」
「ほ、本当に!? ありがとう」
理由を聞かれたらどうしようって思ってたけど。
聞かれなくて一安心。
……したのもつかの間だった。
「テニス部の見学を志願する理由はなんだ?」
当然ながら、尋ねられる訳で……。
あなたに近づきたい、と言えるメンタルもない
私は、当たり障りのない言葉を探す。
その質問から五分程経過しただろうか。
呆れたようにため息をつく手塚くん。
もしかして、後先考えず突っ走る天気屋に見られたのかな……。
そんな心配が脳内を巡る。
だけど、彼は私の肩に手をポンっと置いて。
「理由がないなら、見学期間に見つければよいだろう。
…………だが、見つからないようだったら、
それはお前にむいていないと受け取れ」
「は、はい……!!」
流石部長だなぁ、と思った。
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