片想い19 ページ20
好みがコロコロ変わる葵ちゃんだけど、
一貫して好きでいるのはアイドルだけ。
一生懸命おこずかいを貯めてグッズを集める
様はどんな少女漫画の主人公よりも一途だ。
だから菊丸くんにも、私に言う前よりも
ずーっと思い続けていたのかなぁ、なんて思う。
「なに、ボーッとしているんだい」
「え? なんでもないよ。
それよりCMになったけど、とばさないの?」
葵ちゃんが手に持つリモコンに目を向けながらそう言った。
なんせ気が短い彼女は早業を極めており、画面が切り替わろうものなら
一秒とせずに早送りのボタンを押すはずなのに。
少し、不思議だ。
けれど葵ちゃんからは「あ、うん」とまるで
気にしないような言葉が返ってくる。
ますます不思議な気持ちが重なる私は、首をかしげながら
お気に入りのクッションを膝に抱えた。
と、葵ちゃんは口を三日月に変えたのである。
「よかったねぇ、マネージャーになる権限を得れて」
「う、うん」
「……でもね、お嬢さん。これだけじゃあ物足りないとは
思わないか?」
いつの間にか数センチ先には彼女の顔が。
後ろからは心霊番組に番宣をしている音声だけが聞こえる。
……あぁ、早送りしなかったのをこのためね。
妙に納得がいき、葵ちゃんの問いかけにも静かに頷いた。
確かに手塚くんとは部員とマネージャーという関係だけ
ではここまで勇気をだした意味がない。
マイペースに麦茶を口に含む葵ちゃんは満足そうに微笑んだ。
「だよね。ってことで、明日の土曜は手塚くんとデートする専用の
洋服を買いに行こう」
「えぇ!? そんな、デートなんて……!!」
できるわけないよ……。
いいわ終わる前に、彼女は自信満々にこう言った。
「私も菊丸とデートする!!」
「う、嘘ぉ」
「本当。どうだい、手塚くんとのデート?」
そんなことを言われれば、もう返事は決まっている。
「行くよ、手塚くんとデート!!」
「おう、よく宣言した、えらいぞ!!」
……でも、了承をもらえるかはまた別の話だよね、あはは。
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