片想い15 ページ16
不安が募るに募って、それでも時間は近づいてくる。
これで竜崎先生に断られてしまったらどうしよう。
確かに不純な理由ではあるけど、みんなが練習している
風景を見て感じたことがあったのも確かなんだ。
再び金網にもたれかかりながらため息をつく。
テニスボールが跳ね返る音を後ろに、空気は重たい。
「あ、あと何分くらいかな？」
「五分」
「ごっ……!? うわぁ、緊張する……」
しかし葵ちゃんは至って冷静だ。見習いたい。
私はもうお腹が痛くなってきたし……。
誤魔化しで話題を振ろうにも頭の中がこんがらがって不可能。
どうしてこんなにも緊張するのかなぁ。
落ち着け、落ち着くのよ、A!!
マネージャーを志すのは決して悪いことではないのだから。
いいえ、寧ろ好意的なものじゃ？
無理やり自己肯定をしていると、ついにきた____
「ありがとうございました!!」
見事に揃った部員たちの大きな声。
振り向けばネットの片付けやボールを集めているもの多数見受けられた。
決意を固めてローファーで砂を蹴る。
葵ちゃんもすっかり真剣な表情になり、
お互い顔を見合わせて頷く。
全校生徒の前で読書感想文を披露した時より
ずっと緊張するのが不思議だった。
ファンクラブの波をかき分けながら、いざ。
「しっ、失礼します!!
あ、あの……竜崎先生にマネージャーの届けを了承して
いただきたく、こちらに参りました!!」
まるで軍隊のような申し出だ。
おまけに右手を額にあて敬礼までして。
隣の葵ちゃんも苦笑い。だけどすぐに救いの手を差し伸べてくれる。
「乾くんにも言ったのですが、
やはり私達は不器用です。
しかし、やる気はこの通りあります」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
