片想い11 ページ12
「あぁ〜!! やっと放課後だねぇ、Aよ」
「そうだね! ふふっ。なんだかんだいって嬉しそうだよ、葵ちゃん♪」
真っ赤な顔をして言い訳をする我が親友は何と可愛らしいことか。
ギャップ萌えというものの衝撃を生まれて初めて受けた気がする。
でも葵ちゃんの伸びにも納得してしまうぐらい、
五時間目、六時間目はなんとも長い時間だった。
調子気に鞄を振り回しながら、私たちはテニスコート前にスキップする。
……が。
「わぁ……いっぱいいる、ね」
普段あまり近寄ったことがなかった故、テニス部の威力を舐めていた。
いや、テニス部ファンクラブの、と訂正しておく。
刺激が強そうなミニスカートに、「青学」の文字が書かれたノースリーブ。
そんな独特なスタイルを決め込んだ異様な集団が、
観客側のスペースで異様に息をぴったりを合わせて声をあげていたのだ。
叫び? 奇声?
とにかく凄まじい威圧感を感じる。
それは部員達ではなく、私達に向けられたものと気づくのはそう時間がかからなかった。
睨み返す葵ちゃんの気を抑えて、
金網にもたれかかり、目を合わせないようにする。
と、意識がそれたのか敵意は感じなくなった。
安堵のため息がこぼれる。
「感じ悪くないかい、あのチアガール集団!?」
「しっ、聞こえるよ……。仕方ないよ、私達みたいな素人がひょっこり
覗いてるんだもん。気を悪くしてもおかしくないよ」
「なんだ、それは……。文面だけだとヤクザだよ、ヤクザ。
よくあるじゃん、下っ端が幹部に生意気な態度とって
中堅にいびられるヤツ! あれと一緒」
「あ、あははは……。というか、今度は人情映画にハマったの?」
「あ、バレた?」
またわかりやすい葵ちゃんだ。
本当はテニスコートを見て
手塚くんや顧問の先生を探したいのだけど、
振り向けば今度はめった刺しにされる気がしてそうにもいなかない。
実際背中を向けている今も針で刺されているような感覚がする。
視線の刃というものか。
「どーする? 待ってろって言われたんだろう?」
「うん、乾くんに。やっぱり中に入らないとだめかな……」
「い、乾ぃ!? どうしてそれを早く言わないんだい、
あいつはデータを採取するためなら平気で嘘をつく男だよ!?
今回だってAにカマをかけて今頃、ニヤつきながらノートにメモしてるかもしれない……」
「ま、まさかぁ……」
「そうやって笑っていられるのも今のうちだ! そのうち、わかるさ……」
背筋に悪寒が走った。
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