My Lord. (ページ31)

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『彼女って凄いのね。
　頭もいいし誰にでも平等だし、魅力的すぎるわ。
　まさにパーフェクトガールよ。』

「いっつもいっつもエバンズに助けられてさ、
　あいつも情けない男だよな。」

『エバンズさんが喧嘩止めたのって
　一度やそこらの話じゃないの？』

「そりゃそうさ。
　ジェームズが追っかけ回してるんだから。
　彼女はスニベルスと一緒にいることが多いし。」

『なるほど。』

「それにさ、大体俺らがいるってのに・・・・

Aはシリウスの“情けない男”という
言葉が引っかかり隣で喋り続ける彼を無視して
考え始めた。

スネイプ自身も何度もエバンズに助けられる中で
そう思っているのではないか。

自分が虐められている姿を誰かに見られるの
だけでも嫌なのに、ましてそれが好意を寄せる
異性だとしたらもっとプライドが傷つく。

しかも、本来は男性である自分が彼女を
守らなければいけない立場なのに
いつも間に入って事態を収めるのは彼女だ。

もしかしてもっと強くなりたい、
やり返せるだけの力をつけて彼女を
守らねばならないと思うからこそ強力な呪文や
闇の魔術について勉強しているのではないか。

あくまでもAの頭の中の推測でしかないが、
スネイプの置かれている状況を見る限り
その答えが一番しっくり来るように思えた。

「でな、あの大イカがさーっておい、
　その顔は聞いてねぇな。」

『あ、ね！アイスクリームがね！』

「そんな話1ミリもしてませんけど。」

呆れ気味に返すシリウスにごめんごめんと
抑揚なく謝る。

「さてはおねむの時間だな。
　今日はそろそろお開きにしよう。」

『うん、こんな時間に呼び出されると
　思ってなかったしね。』

「これでも心配してやったんだ。
　じゃまた水曜な。忘れんな。」

『ふぁーい。』

あくびと共に返事をすれば
Aは猫の姿になる。

シリウスはそれを抱き、部屋を後にする。

驚いた猫はしばらく腕の中でもがいたが、
彼のがっちりホールドには勝らず
静かに収まることにした。

美しい星空の下、
庭を抜け廊下にある小さな風景画の下に辿り着くと
地面に降ろされた。

シリウスはしゃがみ込み、
自分を見つめる猫に視線を合わせて話す。

「この絵の下は抜け道だ。
　まっすぐ行けば地下牢に出るぞ、
　じゃあ気をつけてな、おやすみ。」

一番下のレンガを叩くと真っ暗な小道が現れた。

猫はお辞儀をすると歩いていった。