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『…ごめん』
「え？」
『だから、ごめんって』
「何がですか？」
私がお礼を言うことがあっても、末澤くんに謝られることなんて少しもないはずなのに。
『…お前のこと、避けてた』
"避けてた"そうはっきり言われて、胸がズキっと傷んだ。
「私が、何かしちゃったんですよね？」
『いやお前はなんもしてへん』
「末澤くんは理由なく避けたりしないです」
『理由なんかないって、ただ俺が悪くて』
「けど」
『…嫉妬、してただけやってん』
嫉妬？
思わずスマホを耳に当てたまま、末澤くんには伝わらないのに首を傾げてしまった。
『…ほら、正門と2人でパフォーマンスしたやろ』
「はい」
『…嫉妬した、俺もやりたかったから』
「正門くんとですか？」
『ちゃうわ！お前とや！何を聞いてたらそういう解釈なんねん！』
勢いよくつっこまれて、思わず笑ってしまったけど
え？末澤くん私とパフォーマンスしたいって思ってくれてたってこと？
わ、わ、どうしよう。
『…黙んなや』
「え、えと…ありがとうございます？」
『なんで疑問形やねん』
熱くなる頬を抑えて、心底これが電話で良かったと思った。
車の窓に映る自分の顔を見て、愕然とした。
今こんな顔、誰にも見せられない。
特に、末澤くんには。
『まぁとにかく、無事ついてよかった。楽しんで』
そうやって、切られそうになった電話。
もう少しだけ話したくて、「あの」と口が動く。
『ん？』
「あ、いや…あの、お土産買っていきます」
『ああ。楽しみに待っとるわ』
"待っとるわ"それは、私じゃなくてお土産だって分かってるのに。
『なんや急にうふふって』
「末澤くんと話せてよかったです」
『…あそ。ほんなら切るで』
名残惜しさを感じながら、末澤くんとの電話は途切れ
スマホの画面に映る "末澤誠也 (関西Jr) 5:56"の履歴に
まだ顔が緩む。
「桃井さん担任の先生がロビーの方に…あ、俺まだ車の外いますね」
「ごめんなさい、そうしてもらえると助かります」
橘さんが見てはいけないものを見たって顔をして、車のドアをもう一度閉めた。
顔を元に戻すのに、そこから5分掛かった。
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作者名：x | 作成日時：2023年8月25日 21時
