＃１６ ページ16
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春、今年のCRASHのツアーが発表された。
ツアー名は「can say it 2016」
…明らかに関西色の強そうな。
故に発表直後から関西JrのファンがこぞってCRASHのファンクラブに入っているようで、CRASHのファンが困惑しているのをSNSで見た。
どこか浮かない顔の桃井を見て、あいつもきっと心のどこかで納得できてないんだなと悟る。
それでも、関西Jrに情が芽生えた今
俺たちのチャンスを自分だけの意見で潰してはいけない、とかなんとか考えているんじゃないか。
「おい、末澤引くなら早よ引け」
はっとするとくじ引きの順番が俺に回ってきていることに、ようやく気づいた。
ホワイトボードに目を向けると、まだ桃井の隣は空欄だ。
2人でパフォーマンスすることになれば、きっと必然的に一緒にいる時間も増える。
きっと今も色々考えて落ちてる桃井に、なにかしてやれることがあるかもしれない。
ぐっと右手に力を込めて、箱に手を突っ込んで紙を触る。
一番最初に手に当たった紙にしようかと途中まで引きあげたけど、迷ってその隣にあった紙を掴んだ。
「おー！末澤おめでとう！」
「…なにがおめでとうやねん！ハズレくじやないか！」
「俺らと一緒なんやから、大当たりやろ」
丈と大橋がにこやかに自分たちの名前の下の空き枠に、俺の名前を書いた。
桃井の名前が書かれた「2人組」の隣の「3人組」の枠。
俺は惜しくも、桃井の隣に立つ権利を得られなかった。
そして、
「あ」
「はぁ！？なんで正門！？」
「なんか不正したやろー」
大吾と大橋が大騒ぎする中、嬉しそうに紙を見せびらかす正門。
そこには、『2』の文字。
「よろしくお願いします、Aさん」
「こちらこそよろしくお願いします」
早速どんな曲やろうか？なんて話し合う2人を、
『3』の文字を握り締めながら眺めた。
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作者名：x | 作成日時：2023年8月25日 21時
